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マツカサキノコモドキとニセマツカサシメジ

この記事は「今日の雑記」2005年11月13日をそのまま転載したものである

 
2005年11月13日()
 
マツカサキノコモドキとニセマツカサシメジ
 
 この2日間に見たマツカサキノコモドキ(雑記2005.11.11)とニセマツカサシメジ(同11.12)は、同じ松毬から混生して出ていることもあり、外見だけではわかりにくいことが多い。
 図鑑などでは、この両者は外見的特徴から簡単に区別できるかに書いてある。傘の色と形、ヒダの密度、柄の色と基部の状態をよく観察すれば、両者の差異は明らかであるとされる。
 多くの個体を観察してみると、現実はそう甘くない。外見だけでは判断できないケースに頻繁にであう。そこで、以下にこの両者について、表形式で整理してみた。

 顕微鏡的特徴のうち、赤字で記した部分を調べれば「いずれかでない」ことは一目瞭然である。「××である」と言い切るにはさらに詳細な観察が必要である。
 顕微鏡を使うのならば、縁シスチジアを見るのが最も簡単だ。ヒダを一枚つまんでスライドグラスに寝かせてそれを見るだけでよい。
 胞子のアミロイド反応やクランプの有無を見るためには、油浸100倍の対物レンズを使わないとわからない。傘上表皮の観察であれば、低倍率の顕微鏡で十分である。しかし、傘表皮の切り出しはそう簡単ではない。マツカサキノコモドキの傘表皮はよほど上手く切り出さないと、まるで円形菌組織か偽柔組織のように見えてしまう。洋梨形子実層状被タイプの傘上表皮は、押し潰さないよう注意して、かなり薄い切片を作る必要がある。

標準和名 マツカサキノコモドキ ニセマツカサシメジ
学名 Strobilurus stephanocystis Baeospora myosura
属の特徴 モリノカレバタケ型
上表皮層は子実層状被
多くは傘・柄の外皮層にはシスチジアがある
胞子紋ば白色
胞子は非アミロイド
縁・側シスチジアは厚膜
クランプは無い
モリノカレバタケ型
上表皮層は平行菌糸被
多くは傘・柄の外表皮にシスチジアはない
胞子紋は白色
胞子はアミロイド
縁・側シスチジアは薄膜
クランプがある
属名の意味 strobilos(松かさ)+urus(語尾) baeos(小さい)+spora(胞子)
発生時期 晩秋から冬(〜初春) 晩秋から初冬
形態的特徴 胞子紋 白色 白色
まんじゅう型から平らに開き、ついには皿状になる 開けばほぼ平らで、中央部が多少盛り上がる
ヒダ 上生、白色、密 上生、白色、かなり密
表面は微毛に被われ、上部は白色、下部は橙褐色
根本には細毛がある
傘色より淡色ないし白色、白い粉に被われ
根本に太めの長毛
顕微鏡的特徴 胞子 楕円形、
非アミロイド
楕円形
アミロイド (弱くてわかりにくい)
担子器 基部にクランプ無し 多くは基部にクランプあり
ヒダ実質 並列型 並列型
縁シスチジア 厚膜先端に分泌物を帯びる 薄膜で、先端に分泌物などはない
側シスチジア 厚膜で先端に分泌物を帯びる 薄膜、側シスチジアを持たないヒダもある
傘上表皮 子実層状被、洋梨形
傘シスチジアあり
平行菌糸被
クランプを持つ細長い菌糸からなる
傘シスチジア 細長く先端が丸いものと、縁シスチジア型のもの 細長い菌糸が絡み合う
柄シスチジア 傘シスチジアと同じようなシスチジアを持つ 上部に細長い毛(シスチジア様)あり
クランプ クランプは無い クランプがある