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[標本番号:No.8   採集日:2006/09/02   採集地:山梨県、白州町]
[和名:イクビゴケ   学名:Diphyscium fulvifolium]
 
2006年9月3日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 9月2日(土)にニンギョウタケの採取を目的に山梨県白州町の森を歩いた。標本のニンギョウタケを崩さないように慎重に歩いているとき、ふと足元をみると「麦粒をばらまいたような朔」をもったコケが目に入ってきた(a)。最近気になっていたコケではあるまいかと思った。
 朔にはほとんど柄がなく、上の方の葉は中肋が長く突出してまるで毛のようだ(a)。苞葉以外の葉は長い楕円形をしていて(b)、先端がわずかに突出している(d)。葉の基部は心臓型とでもいうのだろうか(c)、葉緑体のほとんど無い厚壁の細長い細胞からなっている(f)。
 葉身細胞は六角形のものが多く、その表面に微突起があるようにみえる(e)。葉の横断切片を切りだしてみた(g)。葉身の組織は二層の細胞からなっていて、その表面には確かに微突起(乳頭papillaというのだろうか)がある(h)。中肋のガイドセルはあまり明瞭ではない(i)。
 せっかく胞子体がついているので、その朔の表側の細胞をみた(j)。朔の表面の横断切片をみると、一層の細胞からなり、乳頭はみられない(k)。たまには胞子をみるのも良かろうと思って撮影してみた(l)。図鑑の検索表から、イクビゴケ Diphyscium fulvifolium に間違いなさそうだ。