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[標本番号:No.13   採集日:2006/09/17   採集地:栃木県、日光市]
[和名:コカヤゴケ   学名:Rhynchostegium pallidifolium]
 
2006年10月2日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 9月17日に栃木県川治温泉近くの鬼怒川遊歩道脇の土の上で、朔を豊富につけたコケに出会った。全体にややツヤがあり、朔柄は明褐色で朔は緑色だった(a)。現地では科も何も見当すらつかなかった。持ち帰って自然乾燥したままずっと放置してあった。
 今朝これを観察してみた。葉は乾いても縮れたり曲がったりせず、湿っている時とあまり変わりない(b)。一部を取りだして水没させると、速やかに生時と同じような状態に復元した(c, d)。枝葉(e)も茎葉(f)も卵状の披針形で先端は尖って捻れている(g)。
 中肋は葉長の2/3から3/4くらいまで達している。葉身細胞は細長く(h)、葉の縁には小さな歯がみられる(i)。歯の横断切片をみると、中肋は意外と単純で葉身の細胞にはパピラみられないが、ややレンズ状に膨らんでいる(j)。念のために茎の横断面も観察してみた。
 多数の朔をつけた蘚類を持ち帰ったのは、じっくりと朔を観察したかったからだ。朔は長楕円形でやや下向きに曲がってついている(a)。蓋の先端は尖っている(k)。朔歯は2列で、外朔歯は16枚ある(l)。外朔歯を拡大してみると、教科書にあるような典型的な姿をみせてくれた。
 こられの観察結果に基づいて、目レベルから辿ると、シトネタケ目アオギヌゴケ科のカヤゴケ属になるようだ。現在の貧しい知識・見識からは、コカヤゴケ Rhynchostegium pallidifolium という種名に落ちた。識者からみれば、観察不足で誤った種名に辿りついているのかもしれない。