HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.17   採集日:2006/10/11   採集地:北海道、上川町]
[和名:セイタカスギゴケ   学名:Pogonatum japonicum]
 
2006年10月19日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 10月8日から15日まで菌類観察のために北海道を歩いた。コケの撮影や採取はほとんど行わなかったが、ごく僅かだけを持ち帰った。そのうちの一つを観察してみた。上川町の高原温泉で採取したスギゴケ科の蘚類だ。背丈が大きくて10〜20cmほどになる(a)。
 乾燥した葉は縮まって内側に巻き込んでいる(b)。水に浸すと葉は開いたが、朔柄は干からびて捻れたままだ(c)。朔の一部に白色で毛むくじゃらの帽がついていた(d)。朔は円筒形で、柄も平滑、先のとがった蓋がある(e)。蓋を取り除くとスギゴケ科独特の朔歯がでてきた。32枚ある(f)。顕微鏡で覗くと鮮やかな色をしている。ついでに胞子も撮影した(l)。
 葉を一枚取りだして水没させた(g)。中肋部から葉の幅一面に薄板があり、葉の縁には大きな歯がある(h)。葉の横断切片を作ってみた(i)。薄板が葉の腹面全体に及んでいることがよく分かる。中肋付近をみると4列ほどの細胞からなり(j)、先端は頻繁に2個に分かれている(k)。
 観察結果をもとに、スギゴケ科の検索表をたどるとニワスギゴケ属に落ちる。次にニワスギゴケ属の検索表にあたると、セイタカスギゴケ Pogonatum japonicum に落ちた。セイタカスギゴケという和名は全く知らなかったが、外観からの観察結果を実証する形となった。スギゴケ属とニワスギゴケ属の違いがなんとなくわかりはじめたような気がする。