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[標本番号:No.23   採集日:2006/10/28   採集地:栃木県、日光市]
[和名:トサカゴケ   学名:Lophocolea heterophylla]
 
2006年11月1日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 10月29日に栃木県日光市川俣から、ボロボロの朽木についていた苔類を持ち帰った(a, b)。小さくて茎の長さは8〜15mm、幅は葉を含めても1〜2mm程度しかない。調べてみようとして後悔した。ただでさえ、小さくて分かりにくい苔類である。蘚苔類初心者には難しすぎるように思える。どうあがいても、種名にまでたどり着けるはずがない。
 とりあえず観察してみることにした。ルーペで見ると葉は瓦状をなし、矩形から台形で、先端が浅く二裂している(c, d)。茎を一本取りだして観察しているうちに乾燥して縮れてきたので、水没させて腹面をだしてみた(e)。腹葉らしきものがみえるが、いまひとつはっきりしない。
 顕微鏡で腹側をみた(f)。あちこちから仮根がでているが(g)、所々に腹葉らしきものがみえる(h)。茎幅の1.2〜1.5倍くらいの幅で深く二裂しているが、これは腹葉なのだろうか(h)。茎の所々に雄苞葉のようなものがみえる(i)。葉の先には無性芽は着いていない(d, j)。葉身細胞にはほとんどトリゴンはみられない(k, l)。油体が無数にあるようにもみえるが、一部には紡錘形の見慣れない粒がみえる(l)。これは何だろうか。
 最初に、葉が瓦状であることから科を絞った。次に、葉に腹片がないこと、茎の途中に雄苞葉らしきものがあること、油体が多数あることなどを根拠に、つぎつぎと絞ると、どうやらウロコゴケ科フジウロコゴケ属が残った。とりあえず、トサカゴケ Lophocolea heterophylla として扱っておくことにした。後日の訂正を含んだ種名の仮決定である。