Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.35   採集日:2006/11/09   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ミヤマサナダゴケ   学名:Plagiothecium nemorale]
 
2006年11月23日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今月初めに日光で採取したコケにやっと手をつけることができた。標高1,400mほどのブナ帯の腐葉土と岩がミックスするやや日陰の土の上に出ていた(a, b)。地下茎の部分では分枝がみられたが、標本から泥を落とすと一本一本がバラバラになった。羽状の枝分れは地表部には見られなかった。葉は、乾燥状態でも(c)、湿った状態でも(d)、大きな違いはない。
 葉は多少扁平気味につき、卵形をしているが、左右対称ではなく非相称である(e, f)。縁は全縁で、中肋は二叉して短く、中央部で消える。葉身細胞は先端部でも、中央部でも細長い紡錘形(g, i)。翼部はあまり発達していない(h)。中肋部の細胞は細い矩形をしている(j)。葉の中央付近の断面を切り出した(k)。パピラなどの突起は見られない。
 には毛葉などはなく、地下径の部分には仮根が多数みられる。蘚類なので、仮根には斜めに仕切った細胞膜(隔壁)が見られる。いくつかの茎の頂端には雌苞葉に包まれた造卵器がみられた。造精器をつけた株がないか、探してみたが見つからなかった。胞子体をつけた個体はひとつもなかった。どうやら雌雄異種らしい。
 サナダゴケ科の特徴を顕著に備えているように思える。複数の図鑑を頼りに、検索表をたどるとサナダゴケ属に落ちる。サナダゴケ属で種の記載を読むとオオサナダゴケとマルフサゴケが近い。両者をていねいに読むと、マルフサゴケ Plagiothecium cavifolium としてよさそうだ。

[修正と補足:2006.11.24]
 何人かの識者からご指摘いただいたが、これはマルフサゴケではないようだ。では何か。ミヤマサナダゴケ Plagiothecium nemorale らしい。当初ミヤマサナダゴケも検討したのだが、平凡社「日本の野生植物 コケ」には詳細図は掲載されていない。あらためてMoss Flora of Japan Part5 p.1038 をていねいに読んでみた。識者からの指摘の通り、P. nemorale と同定するのが妥当と思い、種名を訂正することにした。ご指摘くださった識者の皆様、ありがとうございました。