HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.52   採集日:2006/12/25   採集地:東京都、八王子市]
[和名:キヨスミイトゴケ   学名:Barbella flagellifera]
 
2006年12月27日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 高尾山は都民のオアシスとして名高い。12月25日に沢沿いの琵琶滝コースを歩いた。なかなかコケの名前を覚えられず、野外で見ただけで判断できるコケは五指に余るほどしかない。それでも名前だけ知っていて、一度は出会ってみたいコケがいくつかある。キヨスミイトゴケもその一つだった。撮影は失敗したがこのコケに出会えたのは大きな収穫だった(a)。
 持ち帰って一部を並べてみると、多くは20〜25cmほどあった(b)。現地で見たものには60cmほど垂れ下がったものもあった。枝を這う部分は葉も大きく密についている(c)。それに対して糸のように長く垂れ下がる部分は、葉も細長く茎に疎についている(d)。両者を湿らしてみると、茎を這う部分は葉を広げ(e)、糸のような部分では葉は広がるが茎からは離れない(f)。
 枝の基部の葉を一枚取り外してみた(g)。卵形披針形で、先端は針のように長く伸びる。中肋が葉の基部から中程まである。葉の縁には目立たない小さな歯がある(h)。糸状に垂れ下がる部分の葉は、これよりやや細長く、中肋は非常に弱々しく、基部の近くにしか見られない。
 どの部分の葉でも、葉身細胞は線形〜長い菱形で中央に顕著な乳頭がひとつある(i)。葉を側面からみると透明な乳頭がはっきり分かる(j)。葉の横断切片を切りだしてみると、細胞壁は以外と厚く、そこから乳頭が突出している(k)。長く伸びる茎の断面をみると、特に他のこけと変わった組織構造をしているわけではなかった(l)。
 ハイヒモゴケ科イトゴケ属の中でも、中肋があり、葉身細胞の乳頭は一つであることから、キヨスミイトゴケ Barbella flagellifera に間違いないだろう。いずれ朔をつけたものにも出会ってみたい。また、この次出会うときには上手く撮影できるとよいのだが。