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[標本番号:No.98   採集日:2007/02/11   採集地:静岡県、川根本町]
[和名:オオシラガゴケ   学名:Leucobryum scabrum]
 
2007年2月13日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 2月11〜12日に静岡県の寸又峡温泉、井川湖など南アルプス南部の林道を走ってきた。その折りに出会ったコケをいくつか持ち帰った。今朝みたのは、そのうちでも、寸又峡温泉に近いスギ植林地の斜面に出ていたものだ(a)。遠目にも白く鮮やかだった。
 杉林下の腐植土に何ヶ所か、丸みを帯びた大小の群落をなし(b)、白緑色の細長くやや肉厚にもみえる葉が密集している(c, d)。茎は高さ4〜6cmほどで、ほとんど枝分かれはみられず、長いものでは横に這っている。地面を這う茎の中には7〜8cmに及ぶものもある。
 葉は披針形で、長さ8〜10mm、葉身部の縁は内曲し、先端には背面に大きな乳頭をもった細胞が並んでいる(e)。葉先をルーペなどで見ると、縁には丸みを帯びた歯があるようにみえる。しかし、上部背面をよく見ると、葉身細胞の先端に丸みのある乳頭が備わっている(f, g)。
 葉の横断面は、基部では葉緑細胞を挟んで背腹には2〜4層の透明細胞がある(h, i)。葉の基部以外の横断面をみると、葉緑細胞を挟む透明細胞は背腹ともに1層である(j, k)。茎の横断面には中心束はなく、表皮細胞はやや厚膜の小さな細胞からなっている(l)。
 シラガゴケ科の蘚にはまちがいない。葉先背面に大きな乳頭をもった細胞が並び、全体に姿も大きいことから、オオシラガゴケ Leucobryum scabrum として間違いないだろう。