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[標本番号:No.110   採集日:2007/02/17   採集地:埼玉県、川口市]
[和名:ツクシナギゴケ   学名:Eurhynchium savatieri]
 
2007年2月26日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 去る17日、川口市安行地区の密蔵院近くの湿った斜面の裸地で、密集して出ていたコケを採取した。クヌギ、シデの林で、下部には湿地がひろがり、常時わずかの湿気がある。
 やや黄緑色を帯びた群はしっかり密集していて一本一本がどのようになっているのかよくわからなかった(a, b)。茎は不規則に分枝し、先の方に着いた葉は扁平に着いている。ほぐしてとりだしてみると、茎の長さは2〜5cm、枝の長さは1cm前後だ。一本の茎を水没させて拡大してみると、茎には毛葉はなく、ところどころから密集した仮根がでている(c)。
 茎葉は、やや三角形気味の卵形で先端が細くなり、長さ0.8〜1.0mm、全周にわたって小さな歯があり、翼部はやや下延して茎につく(c)。枝葉は茎葉より大きく、長さ1.0〜1.2mm、卵状披針形で先端は尖り、縁には歯が見られる(e)。茎葉も枝葉もいずれも、中肋が葉長の3/4〜4/5ほどに達し、先端背面は明瞭な針ないし牙に終わる(f, g)。
 葉身細胞は、葉の中央部では、細長い多角形から線形で、長さ30〜50μm、幅3〜6μm、薄膜で平滑(h)。葉先ではやや短く(g)、翼部はやや幅広で矩形の細胞がみられる(i)。枝葉の横断面を見ると、中肋でステライドはあまり発達せず、ガイドセルが目立つ(j)。茎葉でも同様の傾向がある(k)。茎の断面では、表皮部分の細胞は厚壁の小さなものからなり、中心束は弱い。
 分枝のしかた、中肋の様子、毛葉が見られない、葉の形などから、アオギヌゴケ科だろうと見当をつけた。属の検索表をたどると、キブリナギゴケ属となる。種の検索表をたどっていくと、ツクシナギゴケに落ちた。ツクシナギゴケ Eurhynchium savatieri についての記載を読むと、観察結果とほぼ一致する。