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[標本番号:No.116   採集日:2007/02/25   採集地:栃木県、栃木市]
[和名:タチヒラゴケ   学名:Homaliadelphus targionianus]
 
2007年3月1日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 2月25日栃木県栃木市にある満願寺奥の院周辺を歩いた。鍾乳洞の入口付近の石灰岩壁を一面に覆っているコケがあった。岩壁から垂れ下がったコケは、ややくすんだ緑色で極端に扁平でツヤがある(a, b)。濃緑色でやや立ち上がり気味に着生している群もある(c)。
 霧吹きで左半分だけ湿らせて撮影した(d)。乾湿であまり状態は変わらない。岩を這う茎から不規則に枝分かれをし、2〜2.5cmの枝をだし、幅2〜3mm、上下に各2列、計4列に扁平に葉をつける(e)。葉は光沢があり、楕円形〜広い卵形で、長さ1.5mm前後、全縁である。葉の基部は狭く、基部の葉の一部が小舌状となって折り曲がる(f, g)。
 葉身細胞は頂部では、長さ10〜15μmの小さな方形〜菱形(h)、葉の中央部から基部にかけては長さ25〜40μmの細長い菱形(i)、基部で折り返される小舌片では長さ5〜8μmの小さな方形をしている(j)。葉に中肋は不明瞭だが、横断面をみると基部に弱い中肋がみられる(k)。茎の表皮細胞は厚壁の小さな細胞から成り、中心束はみられない(l)。

 濡れた状態で岩を這う姿、まるで腹片を持つかの様な葉は、一見苔類を思わせる。昨年11月に愛知県の山中で初めてこのコケに出会ったとき、蘚類とは思わなかった。観察した早朝には苔類のケビラゴケ属かもしれないと思ったほどだ(覚書2006.11.22)。そのおりは、仮根が多細胞であることから、蘚類のはずだと思い、再検討した結果タチヒラゴケにたどり着いている。
 このコケに出会ったとき、現地ですぐにリボンゴケだろうと思った。リボンゴケには以前出会っているので(覚書2007.1.7)、石灰岩上に生えるというセイナンヒラゴケに出会えないかと周囲を探してみた。今朝検鏡してみると、直ちにタチヒラゴケ Homaliadelphus targionianus であることが分かった。採集した標本には、一部リボンゴケも混じっているおそれがある。現地でルーペを覗いた時に、葉頂がやや尖り歯をもったように見える個体がいくつかみられたからだ。多分、リボンゴケとタチヒラゴケが混生して石灰岩壁に生えていたのだろう。