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[標本番号:No.125   採集日:2007/02/25   採集地:栃木県、佐野市]
[和名:マルフサゴケ   学名:Plagiothecium cavifolium]
 
2007年3月8日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先月25日佐野市の山中から持ち帰ったコケは、残り2種類のみとなった。今朝はそのうち、サナダゴケ属と思われるものを観察した。周辺は、渓流沿いの緩やかな北側斜面で、一面に腐葉土が覆っている。樹木の根本から腐葉土にかけて一面に緑の絨毯をなしていた(a)。
 近づいてみると、光沢のある茎が這っていて、それらから若い枝が立ち上がり気味にでている(b, c)。不規則に枝分かれし、茎の長さは3〜4cm、扁平気味に枝全体に丸く葉をつけている(d, e)。枝の表面には毛葉も無性芽も見られない。
 葉は卵形〜卵状楕円形で、長さ1.2〜2mm、全縁でほぼ相称。葉はおおむね中央で深く凹んでいる。二叉する中肋は葉の中程まで届かない。先端は尖った三角形やら、急に細くなって先が曲がるものがある(f)。湿っていても乾いても葉の形はあまり変わらない。
 葉身細胞は、葉先付近では長めの菱形〜線形(g)、葉の大部分では長い線形で、長さ80〜140μm、幅7〜10μm、細胞膜はやや厚めである(h)。葉はやや下延していて、翼の部分では、大きく幅広になっている(i)。葉の横断面を見ると、二叉する中肋はとても弱々しい。
 茎や枝の横断面をみると、表皮細胞は薄膜でやや大きめの細胞からなり、そのすぐ内側には厚膜の小さな細胞が層をなし、最内部では、薄膜で大きめの細胞からなり、明瞭な中心束はみられない(k, l)。

 観察結果からいろいろ迷った。「〜ではない」法で可能性を否定して科をたどっていくと、サナダゴケ科が残った。サナダゴケ科の検索表からは、サナダゴケ属に落ちる。次に属の検索表をみると、すっきりと分岐の枝をたどれず、いくつかが候補に残った。
 オオサナダゴケモドキとマルフサゴケが大きく浮上してくる。オオサナダゴケモドキは以前一度観察しているが(覚書2006.1.5)、この蘚類とはかなり印象が違う。オオサナダゴケモドキにしては、枝が短く、幅も狭く、葉も小さい。葉身細胞の幅が広い。葉の基部に無性芽が全くみられない。
 マルフサゴケと考えると、扁平気味の葉の付き方が気になる。他の観察結果はどちらかというと、オオサナダゴケモドキとするよりも、マルフサゴケとしたほうが納得できるものが多い。とりあえず、マルフサゴケ?として扱っておくことにしよう。

[修正と補足:2007.04.25]
 昨日、千葉県立中央博物館の古木達郎博士にみていただいた。マルフサゴケ Plagiothecium cavifolium で間違いないという。