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[標本番号:No.149   採集日:2007/03/20   採集地:埼玉県、川口市]
[和名:コモチイトゴケ   学名:Pylaisiadelpha tenuirostris]
 
2007年3月26日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 去る3月20日川口市にあるアミガサタケのよく出る神社によった。目的のアミガサタケはまだ見られなかったが、ご神木の北側についたコケを持ち帰ってきた(a)。黄緑色〜黄褐色でややツヤがあり、群生した姿は犬の毛並みを思わせる。茎は細く所々で分枝し、長さ10〜20mm、茎の幅は葉を含めても0.5mmもない(b, c)。枝は長さ5〜10mmで、幅は茎とほぼ同じである。
 枝葉は放射状につき、乾燥時は茎に軽く接着しているが、濡れると直角近くまで開く(d)。葉は卵状披針形で、長さ0.5〜0.9mm、尖端が一方に鎌形に曲がるものもある。鋭く尖った葉先には微細な歯があるようにもみえるが、ほぼ全縁であり、中肋はみられない(f)。
 葉身細胞は、尖った葉先も葉身部も、線形で長さ45〜75μm、幅3〜4μmで(g, h)、翼部には薄壁の方形の大型細胞が見られる(i)。葉が非常に小さいので、横断面を切り出そうとしたがやはり上手くいかなかった(k)。茎の断面をみると、ほとんど分化がみられず、中心束もない(l)。
 葉腋には糸状の偽毛葉と、虫のような一列の細胞が連なった無性芽がついている(d, e)。無性芽の多くは褐色を帯び、細胞表面には微細な疣が見られる(j)。
 コモチイトゴケ Pylaisiadelpha tenuirostris に間違いなさそうだ。樹幹に着生しているときの印象、葉身細胞の形とサイズ、無性芽の形態など、かなり特徴的なこけらしい。