HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.156   採集日:2007/03/21   採集地:千葉県、君津市]
[和名:トサホラゴケモドキ   学名:Calypogeia tosana]
 
2007年3月31日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 城址公園の遊歩道を歩くと暗く湿った斜面に何種類かのコケが混生していた。そのなかに、白緑色の苔類が混じっていた(a)。茎の長さは1〜2.5cmで、ほとんど分枝なく、重なり合った葉は、茎に対して斜めに倒瓦状につき、腹片はなく、腹葉がある(b, c)。葉は卵形で、葉先には小さな歯が二つ、あるいは丸頭で、縁は全縁である(d)。
 葉身細胞はやや厚膜の六角形で、トリゴンはあまり見られず、ブドウの房状の油体がひとつの細胞に1〜5つほどある。油体は白色で、中にはイモ虫状のものもある。葉身細胞のを合焦位置を変えた状態で、別々の葉のものを掲載した(e, f)。焦点位置をずらして行くだけで、細胞膜の厚さや、トリゴンの有無などがずいぶんと違ってみえる。
 ツキヌキゴケ科のトサホラゴケモドキ Calypogeia tosana だろうと思うが、典型的な姿ではなさそうだ。また、発生場所周辺をていねいに探してみたが、ペリギニュームや朔ものはなかった。図鑑などにはトサホラゴケモドキの特異な姿の朔が載っている。朔をつけるとしたら、3〜4月頃なのだろうか。遠からず、朔をつけ典型的な姿のものに出会えることだろう。