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[標本番号:No.161   採集日:2007/03/23   採集地:埼玉県、さいたま市]
[和名:コメバキヌゴケ   学名:Haplocladium microphyllum]
 
2007年4月3日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
 埼玉県さいたま市の公園の用水路脇に朔をたくさんつけたコケが密集していた(a)。鮮やかな朔とは対照的に、褐色を帯びた葉は頼りなげに地面を這っている(b)。茎は不規則に分枝し、短い枝をだす(c)。乾くと葉が茎に接し(d)、湿ると60度ほど茎から開き出す(e)。
 茎葉は、長さ1.5〜2mm、三角形の基部をもち、一本の中肋が尖端に達し、その先が長く芒となり、時に鎌状に曲り、先端には微細な歯がある(f)。枝葉も茎葉とほぼ同じような形状をしているが、中肋の突出が短く、葉の大きさが一回り小さい(g)。
 葉身細胞は長めの方形〜多角形で、長さ8〜18μm、幅4〜6μm、中央付近に乳頭がある(h〜j)。乳頭が背面と腹面のいずれにあるのか、あるいは葉身細胞のどの位置にあるのか、これらが最初わかりにくかった。葉の横断面(k)、縦断面(l)を切り出してみると、背面の中央付近に乳頭があることを確認できた。茎や枝の表皮細胞は厚壁の小さなものからなり、表面には多数の毛葉がみられる(m)。
 無数に朔をつけていたので、充分成熟しているものがあると期待していたのだが、いずれも未成熟なものばかりだった。楽に蓋を分離できるものはなく、無理やり外してみたが朔歯はまったくできていなかった(n, o)。

 シノブゴケ科のコバノキヌゴケ属までは楽にたどりつけた。しかし、そこでコメバキヌゴケなのかノミハニワゴケなのか迷った。ノミハニワゴケならば、葉身細胞の背面上端に乳頭があり、コメバキヌゴケであれば、中央に乳頭があるとされる。しかし、そう典型的な細胞ばかりではなく、顕微鏡下で葉を平面的にみていると分かりにくかった。そこで、葉の横断面(k)ばかりでなく、縦断面(l)を切り出してみることになった。
 あらためて、"Illustrated Moss Flora of Japan" をみると、どうやらコメバキヌゴケ Haplocladium microphyllum とするのが妥当と判断できた。