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[標本番号:No.162   採集日:2007/03/31   採集地:群馬県、上野村]
[和名:ナガバチジレゴケ   学名:Ptycomitrium linearifolium]
 
2007年4月4日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 きのこ情報を得て群馬県上野村に行ったおりに、標高800m付近の林道脇の岩に暗緑色のこじんまりした丸い塊状に発生していたコケを持ち帰った(a, b)。
 茎は1.5〜2cm、基部でわずかに分枝し、乾くと葉が巻縮し(c, f)、湿ると大きく開く(d, e)。葉は卵形の鞘部から長く線形に伸び、長さ3〜6mm、葉縁上部には歯があり(g)、中肋が葉頂にまで達する。葉身細胞は丸みのある矩形で厚膜、径5〜10μm、鞘部の細胞は薄膜の大きな矩形で、長さ40〜60μm、幅8〜10μm。葉の横断面を見ると、中肋にはガイドセルとステライドがよく発達し、葉先では、葉縁の細胞は2層からなる(j)。
 朔は枝から1〜2本出て、赤褐色の柄は長さ3〜8mm。縦皺のある帽が朔の2/3ほどを覆う(k)。朔歯は長く、16枚あり、それぞれの朔歯には深い亀裂がある(l)。
 茎が直立し、葉身細胞が厚膜で方形、朔がほぼ直立することからギボウシゴケ科、次に葉先に透明尖を持たず、葉の基部の細胞が波状に肥厚しないから、チジレゴケ属まではよいだろう。現地ではハチジレゴケではないかと思ったのだが、葉の形が細長すぎること、朔が1〜2本基部からバラバラに出ることなどから、どうやらナガバチジレゴケ Ptycomitrium linearifolium と思われる。先に観察したもの(覚書2007.3.16)よりも全体に小振りであった。