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[標本番号:No.164   採集日:2007/03/31   採集地:群馬県、上野村]
[和名:ハマグリゼニゴケ   学名:Targionia hypophylla]
 
2007年4月6日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 上野村で沢に沿って林道をどんどん遡った。切り立った崖沿いの道で薄暗い湿った岩壁に小さな葉状体のコケを見つけた(a, b)。葉状体は小さくひとつひとつは長めの小判のような形で、長さ1〜1.5cm、幅3〜5mm、非常に薄い。
 裏面を見ると、中肋部にそって多数の仮根がつき、その両側に紫色の腹鱗片が2列に並んでいる(d, f)。腹鱗片の形が分かりにくいが、類三日月状をしたものが多い。形を崩さないように外そうとしたが、上手くいかなかった(f)。
 仮根には有紋型と平滑型がある(g)。中肋部を含んで葉状体を横断面で切ってみた(h)。裏側に紫色の腹鱗片があることがわかる(i)。翼部の多くは、4層の組織からなる。ほとんど葉緑体を持たない背側の表皮、その直下の葉緑体を豊富に持った組織、髄部の大型細胞からなる層、腹側の褐色の細胞層である(j)。
 背側の表皮細胞のところどころにアーチ型の気室孔があり、気室孔の底には、葉緑体を豊富にもった小さな細胞が多数ある(k, l)。見ている間に、炭酸同化作用のせいか、気泡が生まれて孔からでていった。
 仮根に有紋型をもち、気室があり、気室孔がアーチ型であることから、ゼニゴケ亜綱の苔類には間違いない。ジャゴケ科、ゼニゴケ科、ヤワラゼニゴケ科などを次々とつぶしていくと、残ったのはハマグリゼニゴケ科だけとなった。多分、ハマグリゼニゴケ Targionia hypophylla としてよいのだろう。秋に胞子をつける頃であれば、今少し楽に同定できるのかもしれない。