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[標本番号:No.171   採集日:2007/04/04   採集地:埼玉県、さいたま市]
[和名:ススキゴケ   学名:Dicranella heteromalla]
 
2007年4月10日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 さいたま市の秋ヶ瀬公園でやや樹下の粘土質の地表に、タチゴケの仲間と一緒に、シッポゴケ科のコケが光沢のある黄緑色の群落をつくっていた(a〜c)。
 茎は直立し、高さ1〜2cm、葉を放射状につけ、ほとんど分枝していない(d)。葉は三角形の基部から急に芒となって伸び(e)、芒の尖端付近には小さな歯があり(f)、太い中肋がある。中肋は基部では葉幅の1/3ほどだが、昼間部あたりでは80〜90%、その先では葉の大部分が中肋部だけとなる。長さは2.5〜3mm、若い葉では先端も青い(f)。
 葉身細胞は矩形で、長さ20〜30μm、幅6〜8μm。翼部での分化はなく、葉身細胞が若干大きめになっている(i)。中肋部の細胞は、大きな矩形で、長さ50〜70μm、幅10〜12μmだが(h)、芒の部分ではやや小ぶりになる(g)。
 葉の横断面を基部近くで切り出すと、中肋部が葉幅の1/3近くを占めているが(j)、葉先近くでは大部分が中肋だけになっているのがわかる(k)。茎の断面をみると、表皮細胞は厚膜の小さな細胞からなり、中心束はみられない(l)。ススキゴケ Dicranella heteromalla としてよいのだろう。