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[標本番号:No.228   採集日:2007/05/05   採集地:福島県、いわき市]
[和名:アナナシツノゴケ   学名:Megaceros flagellaris]
 
2007年5月7日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 大型連休の5日に福島県いわき市の渓谷を歩いた。そこで、滝の岩壁脇に出ていた葉状体を採取した(a, b)。ツノゴケ属らしいが、朔は未成熟で円筒形の包膜から出るツノは硬い(c)。
 葉状体は暗緑色で、長さ2〜4cm、幅4〜8mm、不規則に分枝し、縁は波打ちやや鋸歯状、中肋部と翼部の区別はない(b〜d)。葉状体を横断面で切ってみると、ゼニゴケ類のような組織分化はなく、茶褐色のかたまりを内包する(e, f)。葉身細胞には数個の葉緑体があり、細胞間隙はみられない(g)。背腹の表皮細胞はやや扁平で小さい。
 包膜は葉状体から直立し(c)、表面はほぼ平滑、そこから長さ2〜3cmの朔が出ている。朔を基部付近(包膜の直上部)と先端付近で横断面を切り出してみた(h, i)。表皮細胞はやや厚膜で小さな細胞からなり、先端付近では橙色をしている。包膜を一緒に切り出してみた(j)。
 朔が充分に成熟していなかったこともあり、胞子の細かい観察はできなかった。しかし、朔表面に気孔はなく、朔の表皮細胞は平滑で、竹を並べたような姿をしている(l)。朔の内部には、未成熟の胞子と、同じく未成熟な弾糸が見られる(k)。

 朔壁に気孔がないから、アナナシツノゴケ属あるいはキノボリツノゴケ属のいずれかとなり、次に細胞にトリゴンはなく、各細胞に葉緑体が複数あることから、アナナシツノゴケ属に落ちる。この属は国産種としてはアナナシツノゴケ Megaceros flagellaris しか知られていないようだ。
 平凡社の図鑑によれば、アナナシツノゴケの分布について、千葉県以西となっているが、福島県いわき市の夏井川渓谷でも分布が確認できたことになる。