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[標本番号:No.212   採集日:2007/05/03   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ムラサキヒシャクゴケ   学名:Scapania undulata]
 
2007年5月14日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 5月3日、栃木県鬼怒川温泉周辺地区で小山の支流を歩いた(a)。標高400〜450m、周辺は典型的なブナ科の落葉樹林である。河原の転石や水流の中の石に緑色から部分的にやや赤みを帯びたコケが厚いマット状をなしていた(b)。
 遠目には蘚類か苔類かわからなかったが、近づいてみると花被をつけた苔類らしい(c, d)。マットは思いの外厚く、8〜12cmほどにもなる(e)。そこから10cmほどの茎をもった植物体をいくつか取りはずしてみた(f)。どうやら腹片よりも小さな背片をもっているようだ。
 葉は倒瓦状に接在し、小さな背片は腹片の1/2〜3/4長、縁には微細な歯があり、やや丸みを帯びた方形で、茎を覆っている(g, h)。腹片は卵形〜倒卵形で、縁がやや波打ち、全縁ないし微歯をもったものが混在する(i, j)。腹葉はない。葉身細胞は多角形で薄膜、トリゴンはない(k, l)。葉の先端や中央部、基部などで細胞の大きさには、とても大きなバラツキがある。小さな粒子をもった油体が各細胞に3〜7つ見られる。
 ヒシャクゴケ科のムラサキヒシャクゴケ Scapania undulata のようだ。背側の裂片が腹側の裂片より小さい苔類を見たのは初めてだった。久しぶりに、井上浩『日本産苔類図鑑』を参照した。色・形ともに変異が大きい種だとある。