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[標本番号:No.195   採集日:2007/04/29   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ウマスギゴケ   学名:Polytrichum commune]
 
2007年5月16日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日光の標高1,400m付近で、樹幹にスギゴケの仲間が着いていたので、念のために持ち帰った(a, b)。形態的にはどうみてもウマスギゴケかオオスギゴケに見える(b)。しかし、樹幹に発生するスギゴケ類とは何者なのだろうか、それが気になり調べてみる気になった。
 現地で樹幹上で既に湿状態と乾状態の両者をみているが(b)、持ち帰って数日放置した物は、乾燥して葉が枝に密着した状態となっていた(c)。葉は茶褐色の鞘部から大きく外曲し、縁には鋭い歯がある(d〜f)。乾燥状態のママ、茎の先端近くで横断面を切り出した(g)。葉先から鞘部まで数ヶ所で切り出してソフト上で一枚に合成した横断面も並べてみた(h)。
 薄板は5〜6細胞の高さがあり、横断面で端の細胞は凹型をしている(i)。この時点でウマスギゴケであると判定できる。念のために、薄板を腹側から見た画面(j)、同じく縦断面から見た姿(k)、さらに茎の横断面(l)もアップしておこう。

 最初にこのこけを見たとき、ウマスギゴケだろうと思ったのだが、図鑑類のどこにも樹幹に着生するとは書いていない。保育社の図鑑には「明るい場所の粘土質の土上や湿原中に群生する」とある。樹幹に出ていたから採集して調べてみたのだが、結果はウマスギゴケだったわけだ。自信を持ってウマスギゴケと判断できていれば、持ちかえることはなかったろう。ちなみに周辺のカラマツ落ち葉の上からも出ていた。