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[標本番号:No.229   採集日:2007/05/08   採集地:栃木県、日光市]
[和名:フジウロコゴケ   学名:Chiloscyphus polyanthos]
 
2007年5月24日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 奥日光湯滝の近くの支流で、流水の中の石に何種類ものコケがついていた(a)。最も広く占有している種は苔類らしい(b, c)。その場でルーペで観察すると、卵形の丸い葉をもち、先端が二つに割れた小さな腹葉を持つことがわかった。
 茎は長さ2〜7cm、幅は葉を含めて3〜4mm、不規則に分枝する(i)。仮根はごくわずかに腹葉の基部に見られる程度で少ない。葉の付き方は瓦状で、葉はわずかに接するように並び、水平ではなく、90〜120度ほどの角度で開き、茎に平らに縦につく(h)。葉のへりは全縁で、葉先は丸頭(j)。腹片はなく、茎幅と同じかやや狭い幅の複葉をもつ(d〜f)。複葉は先が2裂し、先端が細長く伸びるものもある(d, g)。枝によっては複葉は痕跡程度にしか残っていない。葉身細胞は、大きな多角形で、長径20〜35μm、細胞膜は薄くトリゴンはない(k, l)。各々の細胞には、紡錘形でブドウ房状の油体が2〜4つある。

 瓦状に葉を付け、対生についた葉は広く開出し、腹片を持たず、複葉をもつことなどから、ウロコゴケ科だろうと見当をつけた。茎から枝の分枝の仕方などから、ウロコゴケ属あるいはフジウロコゴケ属らしい。花被や雌苞葉をつけたものがないので、どちらの属となるのかは判然としないので、それぞれの属にリストアップされた種をあたってみた。
 フジウロコゴケ属のフジウロコゴケ Chiloscyphus polyanthos が怪しい。平凡社の図鑑には、フジウロコゴケは名称だけが記され、種の特徴などの記述はない。保育社の図鑑にはカラー絵図はないが、種の記述と若干の図示がある。北隆館の井上浩『こけ:その特徴と見分け方』には、詳細な図と記述がある。観察結果を照らし合わせてみると、ほぼ符合する。
 余談だが、流れの中にしゃがみ込んでルーペで観察しているときに、背中にドサッと、何か冷たいものが落ちてきた。振り返るのも面倒なので、そのまま手で払いのけて観察をつづけた。何が落ちてきたのかはわからなかった。帰宅して写真をみると、長く伸びた枝にアオダイショウらしきヘビがまきついている(a)。多分、このヘビが落ちてきたのだろう。