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[標本番号:No.202   採集日:2007/04/29   採集地:栃木県、日光市]
[和名:クサゴケ   学名:Callicladium haldanianum]
 
2007年5月24日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 栃木県日光の標高1,400m付近の腐木の表面を這うように広がっていたコケを観察してみた(a, b)。這うように伸びた茎は8〜10cmにも及ぶ。湿らすとごくごくわずかに葉が広がったが、乾燥時とほとんど変わらない(c, d)。全体に光沢がある。
 枝は長さ5〜12mm、幅は葉を含めて1〜1.2mm、不規則に羽状に分枝する(b, c)。茎葉も枝葉も似たような大きさと形で、長さ1.5〜1.8mm、卵形で先端は急に細く尖り、中央部でやや凹状となる。先端は軽く鎌状に曲がるものもある。葉身部から先端までほぼ全縁で、中肋は非常に弱く二叉して短いか、ほとんど目立たない(e, f)。から葉を取り除いてみたが、毛葉はなく、偽毛葉ははっきりしない。何本かの枝をよくみると、何となく披針形の偽毛葉らしきものがある。
 葉身細胞は線形で、長さ90〜110μm、幅5〜8μm、平滑で(i)、葉の基部の翼部には方形の大型の細胞が多列に並ぶ(g)。葉の横断面をみると葉身細胞の膜はやや厚い(j)。茎の断面と枝の断面をみると、表皮細胞は厚壁で比較的小さな細胞からなる(h)。

 ナガハシゴケ科なのかハイゴケ科なのかかなり迷った。観察結果を照らし合わせながら可能性をたどっていくと、ハイゴケ属のフジハイゴケとクサゴケ属のクサゴケが残った。フジハイゴケは、茎葉がやや大きく、葉の先端に小さな歯があり、葉身細胞の長さが50〜70μm、幅2〜3μmとされる。クサゴケ Callicladium haldanianum の記述を読むと、概ね一致する。フジハイゴケとクサゴケは外見だけでは分かりにくいほど似ているらしい。