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[標本番号:No.203   採集日:2007/04/29   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ナガヒツジゴケ   学名:Brachythecium buchananii]
 
2007年5月26日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 腐木の表面に朔をつけたコケが這うように薄いマットを作っていた(a, b)。アオギヌゴケ科の蘚類のようだ。這う茎を腐木から剥がしてみると、5〜8cmほどあった。短い枝を不規則に出し、細長い羽状になっている。若い葉ではなく、黄緑色〜褐色の透明な葉を取り外して顕微鏡で覗いてみた。茎葉とその葉身細胞(c, d)、枝葉とその葉身細胞(e, f)、枝葉の基部の様子(e)、枝葉の横断面の様子(h)、茎の横断面(i)、などからナガヒツジゴケ Brachythecium buchananii ではないかと思う。葉はほとんど全縁だが、枝先の若い葉には葉先に微歯をもつものがあった。
 朔を多数つけていたので、今朝は主にこちらを観察してみた。残念ながら帽をつけた朔はなく、蓋をつけた状態のものも数えるほどしかなかった(j)。蓋は短い嘴をもつ円錐形。蓋をとると内外の朔歯が2列に並んでいる(k)。外朔歯を取り外すと、透明な内朔葉をはっきり捉えられる(l)。口環は見あたらない。取り外した外朔歯を1本だけ覗いてみた(m)。基部は2段になった垣根のような形で、整然とかみ合っている(n)。細くなった先の方には、表面に微疣を帯びている(o)。以前にも、ナガヒツジゴケの朔歯や朔柄(p)などはみているが(覚書2007.1.13)、朔そのものの壁や胞子などは見たことがなかった。
 朔の袋状の部分を輪切りにしてみた(q)。朔の表皮は、横断面で見て方形でやや厚膜の赤褐色細胞からなり、そのすぐ内側には透明でやや扁平な1〜2層の細胞が内壁を構成している(r)。胞子の大きさにはバラツキが大きく、径12〜18μmあたりが多い。