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[標本番号:No.215   採集日:2007/05/03   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ヤノウエノアカゴケ   学名:Ceratodon purpureus]
 
2007年5月31日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 コンクリート橋の隅には砂が溜まっている。そこに赤色の胞子体を無数につけたコケが密集していた(a, b)。場所によっては、密集する朔で植物体の葉がわからないほどだ(b)。朔をほとんどつけていない群もある(c)。ということは雌雄異株ということか。
 茎は0.8〜1.2cm、ほとんど分枝することなく、上部に集まって葉をつけている。葉は放射状につき、長さ1mm前後、幅広の披針形、葉縁は背側に巻き込み、中肋が葉頂まであり、葉先には歯がある。葉身細胞は、方形〜矩形、長さ10〜25μm、平滑で場所によってやや厚膜(g)。
 葉の数ヶ所と茎の横断面を切り出してみた(h)。葉縁が背側に巻き込んでいる様子が顕著である。中肋にステライドはみられない。茎の表皮細胞は薄膜で、弱い中心束がみられる。
 朔柄が鮮やかな赤紫色で(b, d)、朔柄は長さ15〜20mm、一見したところ茎の途中から出ているようだが、短い枝の頂から伸びている(e)。朔は円筒形で軽く曲がり、やや尖った蓋と、長い棒状の突起を持った帽をもつ。朔の基部には小さなこぶを持ったものがある(d, i)。乾燥すると、朔は縦皺ができる。
 朔歯は赤褐色で、細く伸びた上部は黄色、基部まで深く二裂している(j)。全体に微細な乳頭をもち、基部では蛇腹を折り畳んだように横に深く条線がある(k)。図鑑に「関節」と表現してあるのはこのことだろうか。口環がよく発達している(l)。
 雌株の葉も、雄株の葉も特に相違はみられない。ヤノウエノアカゴケ Ceratodon purpureus に間違いなさそうだ。昨年も東京奥多摩の古民家の藁葺き屋根の上に群生しているのを見たが、そのときはきちんと観察せず、標本も作らなかった。