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[標本番号:No.267   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:イワダレゴケ   学名:Hylocomium splendens]
 
2007年6月26日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 今週の日曜日に、標高1,200〜1,750m付近を中心に富士山を歩いた。このあたりはシラベ、ツガなどの針葉樹林が広がっていて、林床やら樹幹、樹木の根などは一面にコケに被われている(a)。この標高の針葉樹林で最も支配的なコケはイワダレゴケとタチハイゴケだという。日曜日には、イワダレゴケを色々な標高で採取した。
 標高1,750mで採取したイワダレゴケを観察した(b, c)。大きなものは、25〜30cmもあったが、多くは15cm前後だった(d)。茎は基部が横にはい、地上に出ている茎の中ほどから、新しい茎を直立させている(c〜e)。毎年前年度の茎の途中から新しい茎を伸ばすのだという。確かに、全体は階段状になっている(d)。規則的に羽状に分枝して、美しい姿をしている(e)。
 地表をはう部分の茎葉は、まばらに鱗状につくが、ほとんどが千切れて完全な姿をみせてくれない。斜めに立ち上がりはじめる茎では、葉もやや茎から開き気味につく(e)。この部分の茎葉は、長さ2〜3mmで、卵形の基部から急に細くなり、先端は屈曲している。2本の中肋が葉の中程まで伸び、縁には微歯がみられる(f, g)。葉身細胞は線形で、長さ40〜80μm、幅3〜6μm、先端が乳頭状に突出するものがある(h)。
 枝葉は、位置によってかなり大きさが異なり、長さ0.6〜1.2mm、卵形で中央が凹み、弱い中肋が2本あり、縁には歯がある(g, i)。葉身細胞は線形で、長さ35〜70μm、幅2〜5μm、茎葉同様、端が乳頭状になった細胞が多い(j, k)。
 茎や枝の表面は特異な形の毛葉に被われている。毛葉は先が細かく紐状に枝分かれしている(l)。いくつかの位置で、茎の横断面を切ってみた。枝の断面も一緒に並べてみた。どの部分でも、表皮細胞は厚膜で小さく、中心束は持たず、表面は毛葉に被われている(m, n)。茎葉と枝葉の何ヶ所かで、横断面を切りだしてみた(o〜r)。

 先日、科学博物館新宿分館で行われた「コケ入門講座」の教材にイワダレゴケが含まれていた。それを観察していたので、現地ですぐにイワダレゴケであると同定できた。