HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.273   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:ケシゲリゴケ   学名:Nipponolejeunea pilifera]
 
2007年7月4日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 富士山の標高1,700m地点で針葉樹の樹幹についていた緑色の苔類を観察した(a, b)。すぐ脇にはカラヤスデゴケの群が着生していた。現地でルーペでみると、カラヤスデゴケとは何となく異なった雰囲気を感じた。
 茎は長さ1〜4cm、次々に二叉に分枝する(d)。分枝の仕方が、カラヤスデゴケとは異なった雰囲気を作っていたようだ。葉は倒瓦状に重なり合って着き(e〜g)、卵形でほぼ円頭(h)、葉先には1〜数本の毛のようなものがついている(j, k)。腹片は卵形で2〜3歯があり長毛状になっている(h)。腹葉は茎の5〜6倍の幅があり、楕円形で先端には狭い切れ込みがあり、銀杏の葉のイメージである(i)。葉身細胞は、多角形で、長径15〜30μm、細胞膜は薄く、トリゴンはやや不明瞭(l)。合焦位置によっては、やや大きめのトリゴンをもつように見える。花被は樹木の脂でクシャクシャに形がくずれて観察できなかった。雄花、雌花は見つからなかった。

 ケシゲリゴケ属 Nipponolejeunea までは間違いないだろう。図鑑には何種類か載っているが、記述と比較してみると、ケシゲリゴケ Nipponolejeunea pilifera としてよいと思う。