Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.287   採集日:2007/07/16   採集地:山形県、米沢市]
[和名:ホソバミズゼニゴケ   学名:Pellia endiviifolia]
 
2007年7月28日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 山形県南部の秘湯として知られる滑川温泉の周辺の湿った岩上に葉状体の苔類が群落を作っていた(a)。ホソバミズゼニゴケだろうと思ったが、何となくちょっと違うと感じた。具体的にどこがどのように異なるのかは判然としなかったが、標本を少し持ち帰った。
 葉状体は、長さ2〜4cm、幅6〜9mm、不規則に二叉状に分枝し、縁はわずかに波打ち、全縁で、葉状体腹面の中央には仮根が密集して着き、中肋部は不明瞭(b, c)。腹鱗片の有無や、あるとしたらどのような形をしているのかは、わからなかった(c)。多角形の葉身細胞はとても大きくて、長径120〜150μm、トリゴンはなく、球形や楕円形の顆粒からなる油体が、細胞あたり10数個〜数十個ある(d)。横断面でみると、ほとんど均一な細胞からなり、ごくわずかに、表皮細胞の部分だけ葉緑体が密に分布している(e, f)。中央部から離れるにつれ、次第に細胞層は薄くなり、縁に近づくと1細胞層となる。

 雌器か雄器をつけた個体は見つからず、さらに腹鱗片らしきものも見つけられなかった。ミズゼニゴケ科のホソバミズゼニゴケとしたが、はなはだ心許ない。葉状体の中心部での厚みが9〜11細胞はよいとしても、腹鱗片が見られず、葉身細胞が巨大であり、油体の数が多いことなど、図鑑の記述とはかなり違うように感じる。それより見た目の印象が異なる。
 ホソバミズゼニゴケではないとすれば何だろうか。考えられるのはスジゴケ科の苔類である。ミズゼニゴケモドキはホソバミズゼニゴケとよく似ているとされる。しかし、油体が微細な顆粒の集合からなるので、ミズゼニゴケモドキではないだろう。ミドリゼニゴケにしては、葉身細胞が大きすぎ、横断面での厚みが薄すぎ、油体の数が多すぎる。やはり、これはホソバミズゼニゴケの夏型なのだろうか。