HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.268   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:シッポゴケ   学名:Dicranum japonicum]
 
2007年8月13日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
 富士山の標高1,200m付近、針葉樹林のやや暗い腐葉土の上にシッポゴケ科の蘚類が群生していた(a, b)。ちょっと見た目には、カモジゴケかシッポゴケのようにみえたが、フィールドでどちらか判別する能力がないので、持ち帰っていた。
 茎は長さ8〜12cm、白っぽい仮根を多数つけ、あまり枝分かれせず、葉をやや密集させてつけ、直立して群生する(c)。乾燥しても、葉は巻縮することなく、湿時とあまり変わらない(d)。葉は、長さ10mm前後で、やや広い基部から披針形に伸び、上半部の縁には歯があり(i)、中肋が葉頂に達する(e〜h)。中肋背面には2〜3列の歯をもった低い薄板がある(e, f)。
 葉身細胞は、長い菱形〜楕円形ないし矩形で、角張ることはなく、中央部で長さ60〜100μm、幅10〜15μm、平滑で細胞膜が強くくびれる(j)。葉の上部や縁では、細胞は短い(i)。鞘状の翼部は褐色で暗く、葉身細胞は矩形で、長さ50〜70μm、幅20〜30μm(k, l)。
 葉の中程で横断面を切りだしてみた(m)。中肋背面にわずかな突部がある。次に、葉の各部の横断面を切ってみて、中肋部を確認してみた(n)。どの部分でも明瞭なステライドをもち、中肋部背面には、2列ないし3列の薄板状突起があるが、葉の全体にわたっているわけではなさそうだ。単純に中肋背面に牙状の歯をもっただけの葉もある。翼部の横断面をみると、薄膜で大きな細胞が2層になっている(o)。中肋部には背腹両面にステライドが発達している。

 シッポゴケ科の検索表からたどってみた。葉の翼部の細胞はよく分化し、大きく薄膜で、中肋は比較的細く、中肋には明瞭なステライドがあることから、シッポゴケ属であることは間違いない。
 次にシッポゴケ属の検索表をたどると、葉先は針状に尖り、葉身上部の細胞は細長く、膜にくびれがあることから、シッポゴケないしカモジゴケとなる。検索表によれば、カモジゴケは、葉が密生し、乾くとしばしば鎌形に曲がり、仮根は褐色であるとされ、一方、シッポゴケは、葉はやや疎生し、乾くとほぼ直角に開出し、仮根は白色となっている。
 観察結果にしたがって検索表をたどるとシッポゴケとなる。複数の図鑑のシッポゴケについての記述にあたってみると、ほぼ間違いなさそうだ。