Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.271   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:オオフサゴケ   学名:Rhytidiadelphus triquetrus]
 
2007年8月14日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 富士山の標高1,600m付近のシラビソの樹幹基部から林床にかけて、黄緑色で丈夫な蘚が厚いマットを作っていた(a〜c)。不規則に羽状に分枝し、茎は長さ6〜8cm、なかには20cmにも及び、長さ15〜20mmほどの枝を出す。枝は葉を含めて幅4〜6mm。茎にも枝にも毛葉などはなく(f)、湿っていても(d)、乾燥していても(e)、姿はあまり変わらない。淡赤色の茎を包み込むように被う葉と、葉の縦シワがとても印象的だ(f)。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 茎葉は広卵形でしだいに尖り、長さ3〜5mm、葉の上半部にの縁には歯があり、2本の中肋が葉身の3/4〜1/2まで伸びる(g)。葉の上半部の背面は非常にざらついてみえるが(h)、これは、葉身細胞上部背面が刺状に突出しているためだった(i, j)。
 茎葉の葉身細胞は線形で、長さ30〜65μm、幅4〜7μm、上端背面が刺状に突出する。茎葉の下部や翼ぶでは、葉身細胞は長楕円形で、長さ50〜70μm、幅8〜12μmで、厚くてくびれた細胞壁をもつ(l)。枝葉は、茎葉とほぼ同様の形で、やや小さく、葉身細胞などは、茎葉と同様の特徴とサイズを示す(m, n)。心持ち、先端部が細長いものが多い。
 茎葉の横断面を切りだしてみると、2本の中肋がわずかに膨らんでいる(o)。中肋は2層の細胞からなり、簡素な構造をしている(p)。茎の横断面は、厚壁の小さな表皮細胞があり、中心束がある(q)。一方、枝の断面をみると、中心束はない(r)。

 非常に特徴的なこけであり、楽にフサゴケ属 Rhytidiadelphus のオオフサゴケ Rhytidiadelphus triquetrus にたどり着けた。フサゴケ属の他の種とは、葉身上部の細胞の背面上端が刺状に突出することから、明瞭に区別できる。コフサゴケとフサゴケは葉身細胞が平滑だとされる。
 フサゴケ属は、かつてハイゴケ科とされ、ついでフトゴケ科として独立し、さらにイワダレゴケ科に編入されるという経緯をたどったようだ。ここでは、ハイゴケ科にいれておこう。