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[標本番号:No.305   採集日:2007/08/22   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:コオイゴケ   学名:Diplophyllum plicatum]
 
2007年8月30日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 富士山の標高2,200m、シラビソ樹林の腐植土から樹幹基部にかけて、多くの蘚類と混生していた苔類を観察した(a, b)。茎は長さ4〜8cm、葉を含めた幅3〜5mm、枝分かれや仮根は少なく、葉は茎の左右に横につき、背片が腹片よりずっと小さい(d, e)。
 茎から葉をはずした。葉は背腹に強く折り畳まれ、背片は腹片の2/5〜2/3長、長舌形〜楕円形で丸頭、腹片は長楕円形〜茄子形で偏心し、尖端には細かい歯がある(f, g)。キールは腹片の1/4から2/5で、茎を抱くようにつく(k, l)。腹葉はない。
 葉身細胞は葉の中央から先では、長さ10〜20μm、不規則な多角形で(h)、葉の基部では丸みを帯びた矩形で、長さ25〜35μm(i)。葉身細胞は、背片でも腹片でもほぼ同様で、いずれもトリゴンは大きく、葉の大部分では薄膜であるが、葉の基部では膜がやや厚い(i, l)。葉身細胞の表面には小さな疣が多数あり、このために細胞の輪郭や表面を明瞭に捉えにくい(j)。

 雌苞葉はやや小さめの葉であるが、花被をつけた個体を採取できなかった。葉が深く2裂し、背片が腹片より小さく、腹葉をもたない。葉身細胞のトリゴンは大きく、植物体は大型であることから、コオイゴケ属のコオイゴケ Diplophyllum plicatum だろうと判断した。