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[標本番号:No.337   採集日:2007/09/15   採集地:群馬県、嬬恋村]
[和名:ミヤマスナゴケ   学名:Racomitrium fasciculare]
 
2007年10月20日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 群馬県嬬恋村の標高1,800m付近、北側のやや湿った道路脇の岩盤やコンクリート壁に、黄緑色のコケがいくつも群をつくっていた(a)。茎は長さ3〜6cm、不規則に5〜15mmの枝をつけ(b)、乾燥すると葉が茎に密着し、湿ると半曲するように展開する(c)。
 葉は卵状披針形から披針形で、先端は鈍頭〜やや尖るが、透明尖はなく、葉縁は全縁で細胞壁上に多くの乳頭がある。中肋は比較的薄く、葉頂にまで達する。なお、葉の基部に縦皺などはみられない(e〜g)。また、葉頂が鶏冠状になったものはなく、かなり鈍頭の葉もある。
 葉身細胞は、葉の上部では、方形〜矩形で、長さ8〜15μm(g)、葉の中部から基部では長い矩形〜線形で、長さ20〜40μm(h)、いずれの部分でも、幅は3〜5μmで、細胞壁は厚く波状に肥厚している。翼部の細胞は褐色薄膜でやや大きめの矩形で、乳頭は見られない(i)。葉縁基部には、乳頭を持たない矩形の細胞列がみられる。
 葉の横断面をみると、葉縁は1層で、ステライドの発達は悪く、中肋部は比較的薄く、細胞壁に顕著な乳頭がある(j, k)。茎の横断面に中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(l)。

 シモフリゴケ属であることは間違いなさそうだ。保育社の図鑑で種への検索表をたどると、ミヤマスナゴケ Racomitrium fasciculare に落ちる。種の解説を読むと観察結果とほぼ一致するが、解説が簡略すぎて詳細が不明である。平凡社の図鑑で検索表をたどると、やはりミヤマスナゴケに落ちるが、解説や写真は掲載されていない。
 野口『日本産蘚類概説』によれば、ミヤマスナゴケの葉の頂は「鋭・鈍と変化があるが、鶏冠状にはならない」「葉細胞は狭長で、膜の有節構造が明瞭。変化の多い種」と記されている。さらに、R. fasciculare var. atroviride という変種についても記され、クロミヤマスナゴケ(=ナガエノスナゴケ)という和名をあてている。
 念のために、Noguchi "Mosss Flora of Japan" にあたってみると、Racomitrium fasciculare var. fasciculare としてよさそうだ。Noguchi には、var. atroviride 以外にも、var. brachyphyllum という変種についても触れている。