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[標本番号:No.354   採集日:2007/10/12   採集地:奈良県、上北山村]
[和名:オオシラガゴケ   学名:Leucobryum scabrum]
 
2007年11月19日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 久しぶりにコケを観察する時間がとれた。観察したのは、10月12日に大台ヶ原に行く途中、薄暗いスギ植林地の林道脇の土にでていたシラガゴケ科の蘚類だ(a, b)。やや不鮮明なのは、ケータイのカメラで撮影したことによる。茎の長さは4〜6cm、葉先がざらついて白っぽい(b)。
 葉は披針形で、長さ7〜10mm、上部背面の細胞には、先端の丸い乳頭をもっている(e)。なお、(e)は赤インクで染色してある。合焦位置をずらして、葉上部の細胞をみたり(f)、倍率を上げて確認した(g)。葉の下部〜基部では、細胞表面端に乳頭はみられない(h)。
 葉の各部で横断面を切り出した(i〜k)。切出位置と目安は画像(d)に記した場所だ。葉の上部から中央部あたりまでは、背腹両面とも1層の透明細胞が中央の葉緑細胞を挟んでいる(i, j1)。下部の左右では透明細胞が多層になり始める(j2)。葉の基部では、葉緑細胞を挟んで背腹両面に多層の透明細胞があり、中央付近でのみ1層の透明細胞に挟まれて狭くなっている(k, l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
 葉の横断面には随所に、まるでミズゴケ類の偽孔のようなものがみられる(m)。背面にのみ見られるのであれば、細胞上端の突起部の断面が見えているとも考えられるが、この偽孔様のものは腹面に多い。横断面を切り出したのとほぼ同じ位置で、葉の縦断面を切り出してみると、透明細胞の形は筒状ではなく、変化に富んでいる(n)。このために、横断面を切り出すと偽孔のようなものが現れるのかもしれない。茎の横断面には中心束は見られない(o)。

 シラガゴケ属の検索表にあたった。葉先背面に多くの乳頭があり、葉長7〜10mmから、オオシラガゴケに落ちる。オオシラガゴケについての記述を読むと、観察結果とほぼ一致する。なお、採取地の標高は計測しなかったが、300〜400mあたりと推測される。