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[標本番号:No.358   採集日:2007/10/12   採集地:奈良県、上北山村]
[和名:ツルチョウチンゴケ   学名:Plagiomnium maximoviczii]
 
2007年11月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 10月12日に大台ヶ原に向かう途中、標高520mあたりで、林道脇の濡れた岩壁をチョウチンゴケ科の蘚がひろく被っていた(a, b)。どうやらツルチョウチンゴケ属 Plagiomnium の蘚類のようだ。直立茎はなく、壁面を匍匐する茎は、長さ6〜8cmほどのものが多いが(c)、中には長さ20cmを超えるものもあり、腹面からは多数の仮根をのばしている。
 葉は、長さ4〜7mm、舌形で先端は円頭で微突起をもち、葉全体には波打つように横シワがあり、葉縁には数細胞列の舷をもち、しっかりした中肋が葉頂に達する(d, e)。舷の外側には小さな歯がある。中肋部に隣接する細胞は、ルーペで見ても大形であることがわかる(f)。
 葉身細胞は葉の多くの部分では、不規則な類円形で、長さ15〜25μm(g)、葉頂の微突起部分では、細胞は菱形となり(h)、葉基部では、長さ30〜60μm、幅15〜20μmほどの平行四辺形〜矩形となっている(i)。葉の横断面をみると、中肋部は中心部に大形でやや薄膜の細胞、背腹部に小型でやや厚壁の細胞がみられ(j)、葉縁部分の細胞は一層である(k)。茎の横断面は、厚膜で小型の細胞が表皮を構成し、中心束がみられる(l)。

 この蘚類は、肉眼のみでほぼ同定が可能な特徴的な姿をしているが、念のために、葉身細胞や葉縁などを確認してみた。葉の浅い横シワ、中肋沿いの大きな細胞列、長い匍匐茎などから、ツルチョウチンゴケに間違いなさそうだ。雄器をもった直立茎は見られなかった。