Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.390   採集日:2008/03/01   採集地:千葉県、市原市]
[和名:トヤマシノブゴケ   学名:Thuidium kanedae]
 
2008年4月3日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 3月1日千葉県の市原市民の森(alt 80m)で遊歩道脇にシノブゴケ属が密集していた(a, b)。過去に何度か観察しているトヤマシノブゴケ Thuidium kanedae だと思ったので、採取するつもりはなかった。しかし、よく見ると一部に朔をつけた個体がみられた(c)。
 トヤマシノブゴケだとすれば、これまで朔の観察はしたことがない。そこで採取し持ち帰っていた。茎や枝表面の毛葉の様子(d)、茎葉と枝葉の形状(e)、茎葉と枝葉の葉身細胞の様子(f)などから、トヤマシノブゴケに間違いなさそうだ。今日は主に朔歯を観察することにした。

 朔柄は長さ3〜3.3cm、茎の途中からでる。柄の先の方で曲がり、長卵形で長さ2mm前後の朔を、ほぼ水平につける。採取した標本の朔からは、すでに帽や蓋は失われていた。胞子もほぼ散布され、ほとんど残っていなかった。朔歯の観察にはかえって都合がよい。
 朔歯は内外二重で、ともに16枚から構成される。外朔歯(m)は披針形で(n)、下部に横条があり(o)、先の方は微細な乳頭に被われる(p, q)。内朔歯(r)には歯突起と間毛が顕著で(v)、基礎膜(t)は内朔歯全高の1/2〜3/2の高さがある(r)。朔壁には気孔はなく(k)、表皮は葉緑体のない厚壁の細胞から構成されている(l)。
 上記に掲げた朔歯の写真(i, j)では、外朔歯と内朔歯が明瞭には捉えられていない。そこで、下記に、外朔歯と内朔歯を分離し、各部分を参考のために掲載した。上段が外朔歯(m〜q)、下段が内朔歯(r〜v)。内朔歯の基礎膜、間毛、歯突起が明瞭にわかる。
 

 
 
外朔歯 (m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
内朔歯 (r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
 簡単にできると思っていた内朔歯と外朔歯の分離は思いの外難しかった。結果として、内朔歯の歯突起が折れたり崩れてしまった。なお、口環は明瞭には分からなかった。