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[標本番号:No.438   採集日:2008/05/10   採集地:栃木県、日光市]
[和名:アオハイゴケ   学名:Rhynchostegium riparioides]
 
2008年5月12日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一昨日、栃木県の前日光林道周辺を歩き、沢の水流中の岩に群生している暗緑色のコケを採集した(a, b)。雨降りの暗い沢で、カメラを濡らさないように撮影するのは難しく、生態写真は撮れなかった。採集したコケを、比較的明るい所で白紙の上に置いて撮影した(c)。
 茎ははい、不規則に分枝し、長さ16〜35mm、乾燥すると葉の上半が弱く反転するが、葉は茎に接することはない。茎や枝表面には毛葉などはない。茎葉は卵形〜広卵形で、先は鈍頭、長さ1.8〜2.3mm、全周の縁に微歯があり、中肋が葉長の2/3〜3/4に達する(f, g)。枝葉も茎葉とほぼ同じ形で、長さが1.2〜2.0mmとやや小さく、中肋も多くが葉長の3/4に達する。
 葉身細胞は、葉先付近では長楕円形〜ウジ虫形で、長さ10〜30μm、幅6〜10μm(h)、葉の大半では長楕円形〜線形で、長さ60〜85μm、幅8〜10μm(i)、翼部はあまり分化せず、楕円形〜長い矩形で、長さ30〜40μm、幅10〜25μm(j)。翼部の葉身細胞は薄膜であるが、それ以外の大部分の葉身細胞は、やや厚膜で、表面は平滑であり、茎葉と枝葉で特に相違はない。
 葉の横断面で、中肋には顕著なステライドはみられず、大形のガイドセルもない(k)。茎や枝の横断面には、顕著な中心束がみられ、表皮は厚膜で小さな細胞、髄部は大形で薄膜(l)。

 棲息環境、葉の形、葉身細胞などから、迷うことなくアオハイゴケ Rhynchostegium riparioides としてよいと思う。今回出会ったアオハイゴケは、沢の水流中の岩の上部を中心に群生していた。水量が少ない時などは水面上に現れる位置だろう。川底部分には群はみられなかった。
 アオハイゴケの学名については、Iwatsuki "New Catalog of the Mosses of Japan"(2004) や、平凡社図鑑(2001)、保育社図鑑(1972)ではRhynchostegium riparioides が使われているが、ここでは、(財) 服部植物研究所「日本産蘚類のチェックリスト」(Web版) に準拠して、Platyhypnidium (アオハイゴケ属) を採用した。

[修正と補足:2010.04.15]
 学名をIwatsuki(2004)にしたがって、Rhynchostegium riparioides とした。