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[標本番号:No.424   採集日:2008/04/20   採集地:栃木県、鹿沼市]
[和名:ヒメウルシゴケ   学名:Jubula japonica]
 
2008年5月16日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 沢沿いを走る細い県道沿いの暗く湿った場所で、転石から腐植土にかけて苔類が群生していた(a)。植物体は、長さ2〜4cm、不規則に羽状に分枝し、葉を倒瓦状につけ、葉を含めた茎の幅は1.2〜1.4mm。現地でルーペで確認すると、腹片は背片と比較して著しく小さい。(b)。
 背片は広く開出し、長さ0.6〜1mm、卵形で先端は急に細くなり、縁には1〜10個ほどの刺状の歯がある。腹片は円筒形の袋状で、茎と少し離れた位置につき、狭い1点で背片とつながり、長さは幅の1.5倍ほどで、開口部は下を向く。複葉は、楕円形〜扇形で、深く湾入しており、幅は茎の2.5〜3倍で、深く2裂し、縁には三角形状の刺が多数ある(c〜i, k)。
 葉身細胞は多角形で、長さ40〜60μm、膜は薄くトリゴンはほとんどない。油体は、楕円形〜碁石形で、各細胞に4〜10個ほどある(j, l)。倍率を上げてみると、油体は微粒の集合体のようにみえる。腹片、複葉の葉身細胞も背片とほぼ同じといえる。

 こういう分かり易い特徴をもった苔類はそう多くはないのかもしれない。分枝の仕方や、腹片の形状、腹葉の様子などから、ヒメウルシゴケ科 Jubulaceae ヒメウルシゴケ属 Jubula の苔類に間違いないだろう。背片の縁の歯、腹片の縁の歯などから、ヒメウルシゴケ J. japonica としてよさそうだ。
 たしかに、以前観察したジャバウルシゴケ J. hutchinsiae subsp. javanica (標本No.46) とはかなり様子が違う。No.46を観察した2006年の年末には、まだ右も左もほとんど分からない状態だったが、本標本を現地で見たとき、ヒメウルシゴケ属であることはすぐに分かった。