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[標本番号:No.462   採集日:2008/06/25   採集地:長野県、山ノ内町]
[和名:サワゴケ   学名:Philonotis fontana]
 
2008年6月30日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 菌類関係の知人から蘚類が持ち込まれた。奥志賀高原の標高1500m付近で採取したものだという(a)。発生環境などははっきりしないが、明るい黄緑色のやわらかい感触の蘚類だ。茎は直立し、分枝はほとんどなく、5〜6cmの長さがあり、下部3/5ほどは褐色の仮根に覆われている(b)。ルーペでみると、茎は赤色で、葉には縦のスジが目立つ(c)。
 葉は長さ1〜1.5mm、卵状披針形で、葉縁は反曲し、葉頂は細く尖り、強壮な中肋が葉先にまで達する(d, e)。葉身細胞は長い矩形で、長さ20〜40μm、幅5〜8μm、膜は厚く、腹側の端に顕著な乳頭がある(f)。基部では、長さ25〜45μm、幅10〜12μm、薄膜でやや大形の矩形となり、乳頭などは見られない(g)。葉縁では細胞の端が微突起状となり、小さな鋸歯を作っている(h)。数枚の葉をまとめて、横断面で切り出してみた(i)。中肋にはステライドがない部分が多かった(j)。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は、大形薄膜。丸い朔をつけていたが、すべて未成熟だった。朔柄は長さ3.5〜4cm。なお、仮根表面は平滑。

 タマゴケ科 Bartramiaceae のサワゴケ属 Philonotis に間違いないだろう。平凡社図鑑で種への検索表をたどると、すんなりとサワゴケ P. fontana におちる。種の解説をよむと観察結果とほぼ一致する。今回は、持ち込まれた標本を観察したが、そのうちに、山野に自生する群に出会うことがあるだろう。