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[標本番号:No.478   採集日:2008/07/19   採集地:岐阜県、高山市]
[和名:ダチョウゴケ   学名:Ptilium crista-castrensis]
 
2008年7月23日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先週の土日にかけて、乗鞍岳(長野・岐阜)と富士山を歩いてきた。19日(土)に旧安房峠を越えて岐阜県側の安房平(alt1500〜1600m)で、7〜8種類のコケを採集した。今日はそのうちのひとつ、針葉樹の根本の日陰の腐植土上にマット状に広がる蘚類を観察した(a, b)。
 茎は斜めに立ち上がり、地表面の長さ5〜8cmで、規則的に羽状に枝を出し、長さ6〜10mm内外の枝を出す。三角形の姿が美しい(a〜c)。茎は幅1.5〜2mm、枝は葉を含めて幅1mm内外(d)。茎葉は広い卵形の基部から細く漸尖して伸び、長さ2〜2.2mm、上部は著しく鎌形に曲がり、縁には細かい歯がある(e, f)。それに対し、枝葉は茎葉より一回り小さく、長さ0.8〜1.2mm、披針形で上部は著しく鎌形に曲がる(f)。両者ともに深い縦皺があり、中肋ははっきりしない。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 茎葉の葉身細胞を葉先付近(g)、中央部(h)、基部(i)でみた。葉身細胞は線形で、幅3〜4μm、長さ55〜65μm、平滑(g, h)、基部には幅広の矩形の透明な細胞が見られる(i)。枝葉も茎葉とほぼ同様で(j〜l)、両者ともに細胞壁はやや厚い。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 茎葉と枝葉の横断面を、基部付近で切り出してみた(m)。茎葉(n)も枝葉(o)も表面が平滑でやや厚い壁をもっている。茎の横断面をみると、弱い中心束があり、表皮細胞はやや厚壁で小さな細胞が並ぶ(p)。それに対して、枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞はやや薄膜で、茎葉の表皮細胞よりも大きめの細胞からなる(q)。
 茎や枝の表面には、小さな披針形の葉のようなものがあるようにも、無いようにもみえる。

 採取地の標高、外見的形態などからダチョウゴケ Ptilium crista-castrensis に間違いないと思う。図鑑によれば、茎や枝の表面には披針形の偽毛葉があるという。そう思って茎や枝の葉を取り除いて観察してみたが、よくわからなかった。また、弱く短い中肋があるとされるが、採取標本を見た限りでは、中肋は明瞭には捉えられなかった。