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[標本番号:No.470   採集日:2008/07/19   採集地:長野県、松本市]
[和名:ホンシノブゴケ   学名:Bryonoguchia molkenboeri]
 
2008年7月25日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 7月19日に長野県の白骨温泉(alt1300m)で、ホンシノブゴケと思われるコケを採取した。温泉近くの道路脇のうす暗い斜面に群生していた(a, b)。茎は長さ15〜22cm、上部は緑色だが、下部は褐色で、規則正しく2回分枝し、左右に分かれた枝はほぼ同じ長さになっている(b, c)。まずは先入観を捨ててルーペを覗いてみた(d)。
 茎や枝の表面は密集した毛葉に覆われている(e)。高倍率のルーペでみると、茎葉も枝葉も表面が非常にざらついてみえる。葉の一部を顕微鏡で覗いてみると、各細胞に一つ、鋭く大きな牙状の乳頭がある(f)。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 茎葉は広い卵形の基部から急に細くなって、針状に伸び、長さ1.3〜1.8mm、表面には深い縦皺があり、葉縁は反曲し、太い中肋が葉頂近くまで達する(g, h)。葉身細胞は、葉の多くの部分では長い楕円形で、幅6〜12μm、長さ10〜20μm、やや厚壁で(j)、葉頂部では細く小さめとなり(i)、葉基部では長さ60μmを超える(j)。葉の基部周辺と中肋付近の細胞は平滑だが、それ以外の多くの部分には、各細胞ごとに一つの牙状の大きな乳頭がある。葉の横断面をみると、中肋にはステライドがない(l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 枝葉は茎葉に比べると非常に小さく(h)、中肋は葉の中程までしかない(m)。ほとんど中肋がない枝葉も多い。葉身細胞は菱形〜多角形で、長さ10〜20μm、幅8〜12μm(n, o)、厚壁で各細胞には、巨大な牙状の乳頭がある(r)。牙状乳頭の高さは15〜20μmに及ぶ。毛葉は披針形のものやら糸状のものがある。茎の横断面にも枝の横断面にも中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(q)。なお、朔をつけた個体は無かった。

 観察結果は、図鑑のホンシノブゴケ Bryonoguchia molkenboeri についての解説とほぼ一致する。あらためて振り返ると、ホンシノブゴケの牙状乳頭は、シノブゴケ科の他の蘚類の乳頭の高さとはまるで違う。ルーペでみても葉がざらついて見えることに納得した。