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[標本番号:No.458   採集日:2008/06/24   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:フトリュウビゴケ   学名:Loeskeobryum cavifolium]
 
2008年7月27日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 今日も引き続き、先月(6/24)奥多摩で採取したコケを観察した。沢沿いの標高545m付近、日陰の石灰岩壁につもった腐植土に大形のコケが群落をなしていた(a, b)。乾燥標本となっても、姿は湿時ほとんど変わらない(c, d)。不規則に羽状に分枝し、全体にボテっとした印象を受ける。
 実体鏡の下でみると、葉には乾燥時でもシワなどみられず、丸味を帯びて茎や枝に密集している(e)。茎葉と枝葉を取り外して並べてみた(f)。茎葉は、長さ3〜3.5mm、広卵形でボートのように深く凹み、急に細くなって針状披針形にのび、基部は耳状に下延する(f〜h)。葉縁には鋸歯があり、2本の弱く短い中肋がある。茎につく部分は赤色を帯びている。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 枝葉は、茎葉とほぼ同様の形で、茎葉の1/2〜4/5ほどの長さ、茎葉と同じく深く凹む(f)。いずれの葉でも、広卵形が急に細くなる位置では、葉縁が顕著に内曲する(i)。
 茎葉の葉身細胞は、長楕円形〜線形で、幅5〜8μm、長さ60〜120μm、平滑で、細胞壁は厚くくびれがある(j〜l)。枝葉の葉身細胞でも、茎葉のそれとほぼ同様だが、細い枝先の葉では、幅が狭く短めの葉身細胞をもつものも多い。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 茎葉の横断面をみると、細胞壁の厚いことがよくわかる(m)。茎の横断面には弱い中心束があり、表皮は厚膜で小さな細胞から構成される。表皮からは、多数の毛葉がでている(n, o)。枝の横断面でも同様である。この毛葉は、ルーペなどで眺めてもわかりにくく、茎や枝の葉をどけてはじめて毛葉のあることがわかる(p)。毛葉は、一細胞列で二叉分岐し、先端は尖る(q, r)。

 毛葉を持つことから、候補はかなり限定される。葉身細胞が平滑で細長いこと、葉の形状などから、イワダレゴケ科 Hylocomiaceae のリュウビゴケ属 Loeskeobryum にたどり着く。平凡社図鑑をみると、この属では日本産のものは1種とあり、フトリュウビゴケ L. cavifolium が記されている。解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。