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[標本番号:No.452   採集日:2008/06/24   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:ハマキゴケ   学名:Hyophila propagulifera]
 
2008年7月31日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 6月24日に奥多摩の石灰岩地で採取したコケがまだいくつも残っている。まずはそれを片づけてから、他のコケをみることにした。今日は石灰岩壁に群生していたハマキゴケと思われる蘚類を観察した(a)。これまで、石垣やコンクリート面などに着いたものは何度もみている。石灰岩壁についたものは初めて見たので、念のために観察してみた。
 既に採取から1ヶ月以上経過しているので、すっかり乾燥して、葉が両側から巻き込んでいた(b)。水没させるとすぐに葉は展開して、鮮やかな色にもどった。茎は高さ0.8〜1.2cmで、全高の2/3程は茶褐色をしている。葉は、長さ1.2〜2mm、長楕円形〜長舌形で、全縁、上部では緑色だが下部では褐色、中肋が葉頂に達する(d, e)。KOHによる反応は黄色
 葉身細胞は丸味を帯びた方形で、長さ4〜8μm、背側は平滑だが、腹側は凸レンズのようにマミラをなす(f, g, i)。基部では大形で透明な矩形の細胞が並ぶ(h)。葉の横断面をみると、中肋にはステライドがある(i)。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞はあまり明瞭な分化はしていない。茎ごとまとめて横断面を切ると、無性芽が多数ついてきた(k)。無性芽は多細胞からなる倒卵形〜洋梨形をしている(l)。

 ハマキゴケ Hyophila propagulifera に間違いなさそうだ。山地の石灰岩壁や林道脇の法面につくものも、都会の石垣につくものも、特に違いはないことを確認できた。