Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.466   採集日:2008/07/19   採集地:長野県、松本市]
[和名:イボタチゴケモドキ   学名:Oligotrichum aligerum]
 
2008年8月16日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 乗鞍岳の山頂近く標高2600m付近で、車道脇の岩の隙間にスギゴケ科の蘚類が群生していた(a, b)。現地でルーペーで見ると波打ったような姿の薄板があった。茎は高さ1.5〜2.5cm、わずかに分枝し、乾燥すると葉が緩く巻縮する(c, d)。
 葉は透明な鞘部から披針形に伸び、長さ2〜3mm、葉縁上半部には単細胞からなる微歯がある(e〜g, j)。茎の先端近くの若い葉は小さく、長さ1〜1.5mm、翼部の小さいものが目立つ(e, h)。薄板は背腹両面、主に中肋上に、背側では葉身上にもある。腹側の薄板は葉の上半部で大きく波打っている(f, i)。葉を押し潰して見るとより明瞭に分かる(j)。葉身細胞は方形で、長さ8〜12mm(k)、翼部では矩形で薄膜、長さ15〜40μm(l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 葉の横断面を何ヶ所かで切り出してみた。葉先付近では腹側の大半を薄板が覆い、葉身の大部分では、中肋上に6〜10細胞の高さの薄板が5〜7列、波打って並ぶ。中肋背面側には、1〜6細胞の高さの薄板が5〜7列ある。背面の薄板は中肋以外の部分からも1〜4細胞の高さのものが随所に見られる。薄板の膜は薄く、先端細胞の表面は平滑(m, n, p)。翼部の中肋上にも1細胞の高さの薄板がある(o)。薄板を側面からみると、葉身細胞とほぼ同じような大きさと形の細胞が並ぶ(q)。茎の横断面には中心束がある(r)。

 葉の背腹両面に波打った独特の薄板があることから、直ちにタチゴケモドキ属 Oligotrichum だろうと思った。保育社の図鑑で検索表をたどると、ハグルマゴケ O aligerum に落ちる。この学名に対して、現在は「ハグルマゴケ」の和名は使われていないらしく、平凡社の図鑑、Iwatsuki "New Catalog of the Mosses of Japen" では、イボタチゴケモドキという和名が使われている。葉先の横断面をみると、ハグルマゴケという名称がピッタリするのだが、ここではイボタチゴケモドキという和名を採用した。