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[標本番号:No.456   採集日:2008/06/24   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:エゾヤハズゴケ   学名:Hattorianthus erimonus]
 
2008年8月17日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 6月24日に奥多摩の石灰岩地で採集した最期のコケを観察した。苔類だったので、タッパウエアに入れたまま冷蔵庫にずっと放り込んでおいた。標高550m、沢の支流が流れ込む岩壁上から周辺の腐植土にかけて群生していた(a)。葉状体は先端で二叉状に分枝し、明瞭な中肋部があり、幅は4〜8mm、縁に毛はなく波打ち、背面中肋上に雌苞膜らしきものがある(b, c)。
 雌苞膜らしきものは、盃状〜裂片で基部で合着し先は鉅歯状となっている(d)。あるいは、これは偽花被なのかもしれない。腹面の中肋上には、一細胞列からなる腹鱗片がある(e)。腹鱗片は5〜8細胞からなる(f)。葉の横断面をみると、中肋部には中心束が2つあり、翼部は1細胞層で中肋部との境界は明瞭である(g)。中心束の細胞は周囲より小さく暗紫色をしている(h)。葉身細胞は多角形で、トリゴンはなく、長さは50〜70μmの部分(i)と、30〜50μmの部分がある(j)。油体についてははっきり分からない。

 葉状体が先端で二叉状に分枝し、明瞭な中肋部をもち、翼部は広く単細胞層、などからクモノスゴケ科 Pallaviciniaceae の苔類に間違いない。属への検索表をたどると、葉状体の縁に毛がなく、中肋部に2本の中心束をもつことなどから、エゾヤハズゴケ属 Hattorianthus に落ちる。平凡社図鑑によれば、日本産1種とあり、エゾヤハズゴケだけが掲載されている。観察結果は、ほぼ一致する。