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[標本番号:No.483   採集日:2008/07/20   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:スギゴケ   学名:Polytrichum juniperinum]
 
2008年8月26日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 7月20日富士山の標高1,750m付近、開けた樹林の木陰の腐植土上にスギゴケらしき蘚類が端正な姿の大群落を作っていた(a, b)。雄株は雄器盤の中央から新しい茎を伸ばしている(b)。乾くと葉が軽く茎に密着する(c)。
 茎はわずかに枝分かれし、長さ4.5〜10cm。葉は、緑色披針形部分の長さ6〜9mm、卵状の透明な鞘部から線状披針形にのび(d)、尖端は小さな歯をもった芒となる(f)。葉身部の葉縁は全縁で腹側に広く折り畳まれて、薄板を覆う(e, g)。
 鞘部の葉身細胞は長い矩形で、長さ60〜120μm、幅6〜8μm。葉の数ヶ所で横断面を切ってみた(i)。葉上半部では縁が広く薄板を覆い、下部では薄板は開放状態となる。透明な鞘部との境界付近では、葉身細胞は小さな方形〜多角形で、薄板は2〜3細胞高と極度に低くなり、部分的に葉身部が2細胞厚になっている。
 薄板は5〜7細胞の高さをもち、頂端細胞は横断面でフラスコ形(j)。薄板を横からみると、上面は厚い細胞壁の先が大きな乳頭となっている(k)。茎の横断面は、全体が3層からなり、大形で明瞭な中心束がある(l)。

 観察結果から、スギゴケ Polytrichum juniperinum としてよさそうだ。