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[標本番号:No.489   採集日:2008/08/02   採集地:栃木県、日光市]
[和名:オオフサゴケ   学名:Rhytidiadelphus triquetrus]
 
2008年8月28日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 8月2日奥日光の温泉ヶ岳頂上の標高2065mあたりで、針葉樹林の林床を覆うように群生していた大形の蘚類を採集した(a, b)。一次茎は横にはい、二次茎は立ち上がり、不規則羽根状に分枝する。湿っていても乾燥しても、葉は展開したままで、全体の姿は変わらない(c, d)。
 茎には毛葉などなく(e)、枝の途中や先端からは茶褐色の仮根が長く延びる(f)。ルーペでみると、茎葉にも枝葉にも、縦皺が顕著に見える。茎葉は、広い卵形で、長さ3〜4mm、基部の茎を抱く部分から急に反転するように反り返り、葉先はやや尖り、葉身上部の縁には微細な歯がある(j)。中肋は二本で、葉長の3/4に達する(i)。乾燥しても縮れることはない(h)。枝葉はやや小さく、長さ2〜2.5mm、茎葉とほぼ同様の特徴をもつ(g〜i)。
 葉身細胞は線形で、長さ20〜35μm、幅4〜6μm(k)、葉頂部では菱形で、長さ15〜30μm、翼部はあまり発達せず、葉身細胞は線形で、幅6〜8μm、長さ30〜40μm、膜にはくびれがある(m)。葉身背面では、葉身細胞の上端が刺状に突出する(j, n, o)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 葉の横断面をみると、茎葉でも枝葉でも、細胞壁は厚く、中肋にはガイドセルは明瞭だが、ステライドはないように見える(p)。茎の横断面には中心束があるが(q)、枝の横断面にはない(r)。茎でも、枝でも、表皮は厚膜の小さな細胞からなる。

 大形で、茎は立ち上がり、不規則羽状に分枝し、中肋が二本、毛葉がない、などからイワダレゴケ科 Hylocomiaceae のフサゴケ属 Rhytidiadelphus に間違いなさそうだ。さらに、葉身背面の細胞上端が刺状に突出すること、長い中肋を持つことなどから、オオフサゴケ R. triquetrus としてよさそうだ。保育社の図鑑でも、平凡社の図鑑でも、記された種の特徴は観察結果とほぼ一致する。分類は、平凡社の図鑑に従った。