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[標本番号:No.513   採集日:2008/09/04   採集地:宮城県、蔵王町]
[和名:ケヘチマゴケ   学名:Pohlia flexuosa]
 
2008年9月26日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 宮城蔵王の刈田岳山頂近く(alt 1600m)で、砂礫に濡れて水滴を帯びたコケが薄く広いマットをつくっていた(a)。乾燥しても、葉はほとんど縮れることなく、わずかに茎に接着気味になる(b〜d)。茎は高さ1〜1.5cm、ほとんど分枝せず、上部の葉の葉腋には、細く捻れた小枝状の無性芽を多数つけている(e)。
 葉は楕円状披針形で、長さ1.5〜2mm、舷はなく、葉縁はほぼ全縁で、上部に小歯があり、中肋が葉頂近くに達する(f, g)。葉身細胞は、ウジ虫状〜線状六角形〜線形で、幅6〜10mm、長さ80〜100μm(i)、葉頂近くでは長さがやや短く、60〜80μm(h)、どの部分でも薄膜で平滑。翼部は未分化で、葉基部でも葉身細胞の形や大きさは変わらない。
 葉の横断面で、中肋にステライドはない(j)。茎の横断面には、中心束といってもよさそうな透明で小さな細胞の集合束がある(k)。小枝状の無性芽は、長さ0.5〜0.8mm、捻れた筒状で、先端部は尖った1細胞からなる(l)。

 ハリガネゴケ科 Bryaceae の蘚類だろう。朔をつけた個体がなかったが、平凡社図鑑の検索表をたどると、ヘチマゴケ属 Pohlia に落ちる。図鑑によると、分類は容易ではない、とある。種への検索表をたどると、ケヘチマゴケ P. flexuosa、ミネハリガネゴケ P. ludwigii、ホソエヘチマゴケ P. proligera、キヘチマゴケ P. camptotrachela のグループに落ちる。
 キヘチマゴケの無性芽は倒卵形〜長楕円形とされるから、これは排除できる。また、ホソエヘチマゴケの無性芽は糸状で上端に葉の原基がつくというから、これも排除できる。つぎに、ミネハリガネゴケの葉は、卵形で鋭頭、深く凹むというから、これも違う。残るのはケヘチマゴケとなる。
 図鑑のケヘチマゴケについての解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。念のために、Noguchi "Moss Flora of Japan" で、上記4種についての記述を読んでみたが、ケヘチマゴケとしてよさそうだ。