Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.522   採集日:2008/09/27   採集地:群馬県、片品村]
[和名:ミヤマスギバゴケ   学名:Lepidozia subtransversa]
 
2008年10月16日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先月日光白根北面を散策したおりに、スギの腐朽木の表面を被うように、やや堅めのムチゴケ科 Lepidoziaceae の苔類がマット状に広がっていた(a〜c)。茎は長さ5〜10cmで、不規則に2〜3回羽状に分枝し、腹面からは多数の鞭枝を出す。枝の先端もしばしば鞭状となっている(d)。
 茎は径0.5〜0.6mm、葉を含めた枝の幅は0.6〜1mm。葉は離在し、やや斜めに倒瓦状につき、腹葉をもつ。側葉も腹葉もほぼ同型で、腹葉はやや小さく、いずれも1/3〜2/3まで3裂ないし4裂し、裂片は三角形〜披針形(e〜h)。葉掌部の細胞高は10〜12細胞、裂片基部の幅は8〜14細胞(g, h)。
 葉身細胞は丸味を帯びた方形〜多角形で、長さ20〜35μm、トリゴンは小さいか目立たない(i)。油体は紡錘形で、1細胞に5〜12ある(j)。葉身細胞の写真(i)と(j)は同じ部分を、油体が分かりいように、合焦位置を変えて撮影した。さらに高倍率で見ると、油体は正確には捉えにくいが、3〜5μmの長さを持つものが多い。
 茎の横断面を見ると、表皮細胞が明瞭に発達している(k)。念のために茎を縦切りにしてみると、表皮細胞は髄部の細胞と比較して、明らかに短い(l)。少し倍率を上げると、その様子がより鮮明にわかる。

 ムチゴケ科スギバゴケ属 Lepidozia の苔類に間違いなさそうだ。ハイスギバゴケ L. reptans に出会いたいと思っていたが、どうやらミヤマスギバゴケ L. subtransversa のようだ。念のために保育社と平凡社の図鑑で、ムチゴケ科から下の検索表をたどっていくと、明瞭にミヤマスギバゴケに落ちる。平凡社の図鑑には1行の説明、保育社図鑑にはやや詳しい解説があるが、いずれも観察結果とほぼ一致する。