Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.528   採集日:2008/10/11   採集地:群馬県、嬬恋村]
[和名:イボミズゴケ   学名:Sphagnum papillosum]
 
2008年11月14日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今日は10月11日に群馬・長野の県境付近に位置する万座温泉周辺の高層湿原(alt 1670m)で採集したミズゴケを観察した。湿原の中でも小さな凸状になった部分に密集していた(a, b)。
 茎は長さ7〜12cmで赤褐色〜黒褐色(c)。開出枝は下垂枝よりやや長い(d)。茎葉は枝葉より小さく、長さ1.5〜1.8mm、舌形〜ヘラ形で、縁に舷は無く、葉頂部は細く総状に裂ける(e〜g)。茎の透明細胞には膜壁があり、葉先近くの透明細胞には偽孔もある(g, h)。
 茎の表皮細胞には細い螺旋状肥厚があり、表面には1〜2個の孔がある(i)。茎の横断面では表皮細胞が3〜4層をなし、細胞の長端にも孔がある(j, w)。枝の表皮には顕著なレトルト細胞はなく、螺旋状肥厚がみられ、1個の孔がある(k, x)。横断面でみても、表皮細胞の大きさはおおむね均一に近い(l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
 (開出枝の)枝葉は、広卵形で深く凹み、長さ1.8〜2.5mm、葉縁は全縁で、葉先は僧坊状(f)。枝葉の背面には上部にも中央部にも、やや縁の厚い三子孔が多数みられる(m, n)。背面の合焦位置を葉緑細胞と透明細胞の境界付近にしてみると、境界付近がざらついて見える(o, p)。腹面の透明細胞には偽孔もある(q, r)。枝葉を横断面で切ってみると、葉緑細胞は楕円形〜樽形で、透明細胞と接する面には、透明細胞側に微細な乳頭がある(s〜v)。高倍率にしてみると、これはさらに顕著にわかる(u, v)。

 茎や枝の表皮細胞に螺旋状の肥厚が見られるからミズゴケ節 Sect. Sphagnum となる。平凡社図鑑の検索表をたどると、イボミズゴケ Sphagnum papillosum に落ちる。イボミズゴケについての解説を読むと、概ね観察結果と一致する。
 なお、平凡社図鑑の解説中に「枝葉の葉緑細胞と接する透明細胞の側壁面に、多くの細かいパピラがあってざらつくため、容易に区別できる」とあるが、ていねいに見ないと「容易」にわパピラを観察することは難しい(o)。油浸レンズを使えば、パピラはかなり明瞭に捉えられる(p)。枝葉の横断面の観察にあたっても、いい加減な切片や厚めの切片では、隔壁のパピラを明瞭には捉えられない。このパピラを逃すと、オオミズゴケ S. palustre と同定してしまいがちだ。