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[標本番号:No.572   採集日:2009/01/12   採集地:埼玉県、東秩父村]
[和名:アオハイゴケ   学名:Rhynchostegium riparioides]
 
2009年1月14日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一昨日(1/12)埼玉県中部の東秩父村の村道脇の公園で(alt 250m)、流れのほとんどないやや濁った水路に群生していたコケを採集した(a, b)。水中のコケは泥で汚れてか黒っぽく見えたが、水の中から掬い上げてみると暗緑色の透明感あふれる蘚だった(c)。
 茎は長さ3〜6cm、不規則樹枝状に枝を出す。枝は長さ8〜15mm、茎にも枝にも葉を密生する(d, e)。乾燥すると萎びた葉を開出する。葉は広卵形で、長さ1.8〜2.5mm、葉頂はわずかに突出し、葉縁には全周にわたって微細な歯があり、中肋が葉長の2/3〜4/5に達する。茎葉も枝葉もほぼ同じ形で大きさがやや大きいが、古い茎では葉を残さないものが目立つ。
 葉身細胞は長紡錘形〜線形で、表面は平滑、葉身の大部分では長さ65〜90μm、幅8〜10μm(h)、葉先ではひし形となり、長さ10〜20μm(i)、葉基部では方形となり、長さ30〜40μm、幅15〜20μm(j)。葉の横断面で中肋にはステライドはない(k)。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞はやや厚壁の小さな細胞からなる(l)。

 特異な葉の形と葉身細胞、発生環境などからアオハイゴケ Rhynchostegium riparioides に間違いないだろう。これまでは、アオハイゴケというと、清流の飛沫を浴びる岩の上とか、清流の中などでしか見たことがなかった。本標本は、流れがほとんどなく、水底に泥が厚くたまった水路に出ていた。観察にあたっても、細くて白いウジ虫と多数の珪藻に悩まされた。