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[標本番号:No.575   採集日:2009/01/12   採集地:埼玉県、東秩父村]
[和名:チヂミカヤゴケ   学名:Macvicaria ulophylla]
 
2009年1月21日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 久しぶりに苔類を観察した。1月12日に埼玉県東秩父村(alt 250m)で、水流の少ない沢に転がる大きな岩の下半部に着いていた(a)。すっかり乾燥していて形態不明に近い状態だったが(b)、霧吹きで水を吹きかけると、葉縁が激しく波打ったまま暗緑色となった(c)。
 茎は長さ3〜5cm、不規則に分枝し、斜上する枝を出す(d)。葉を含めた枝の幅は3〜4mmで、倒瓦状に葉をつけ(e)、腹面には細い舌形の腹片と舌形の腹葉がある(f, g)。葉は卵型で葉縁は全縁だが、縁が縮れて強く波打っているため、全体の形が分かりにくい。腹片基部は狭く、キールは非常に狭い。背片も腹葉も茎にやや流下している。腹葉は茎幅の1.5〜2倍ほどの幅で、縁は全縁、葉先は反曲している。葉身細胞は楕円形で、長さ25〜30μm、薄膜でトリゴンは大きく、紡錘形〜楕円形の油体が1細胞あたり10数〜30数個ある(h)。
 短枝の先に雌花がついていたので(i)、バラしてみたが造卵器は未成熟のようだった(j)。花被をつけた個体はなかった。苞葉の縁も波打ち、葉先には枝分かれした歯がある(k)。苞葉の細胞は長楕円形で、長さ20〜40μm、トリゴンは大きく、油体の形や数は枝葉と変わらない。形と大きさからは、苞葉と腹苞葉の別は分からなかった。採取標本に雄株はなかった。

 茎は1〜2回羽状に分枝し、葉が倒瓦状に斜めにつき、大形の背片と小型の腹片からなり、短いキール、舌形の腹片をもち、小さな紡錘形〜楕円形の油体を多数もち、無性芽はない、などからクラマゴケモドキ科 Porellaceae の苔類だろう。さらに葉縁が著しく波打つことからチヂミカヤゴケ属 Macvicaria の種となる。平凡社図鑑によれば、この属は日本産1種とある。チヂミカヤゴケ M. ulophylla についての解説を読むと、観察結果と一致する。
 チヂミカヤゴケを採取したのは、これが三度めだが、過去二回は樹幹に着いていた。今回採取した標本は、転岩に着いていた。